2020 年 44 巻 3+ 号 p. 198-
本研究は,色彩文化の視点から,ブリティッシュカラーカウンシルによる安全色と識別表示のための色彩ガイドラインと書籍を検討する.研究目的は,20世紀前半工業における安全対策の特徴を解明するところにある.1949年,ブリティッシュカラーカウンシルは,機械の安全色規則とパイプの識別のための色彩ガイドラインを発行,さらに本団体の創設者ロバート・F・ウィルソンは安全色などを定めるために心理調査結果を反映させたことを著書で述べた.第二次世界大戦終戦以降,イギリス以外の外国資本企業--とりわけアメリカやドイツが勢力を伸ばし,これらに伴って色彩規格も参入してきた.このため,国内で統一された安全色や識別表示が必要になった.安全色カラーチャートの特徴として,警告色としてオレンジ色使用が特筆すべきと思われる.安全色や工業色彩の規定は,労働者の健康と安全に必要で,意識的に標準化されていた.ブリティッシュカラーカウンシルは,流行色を取り入れつつ,イギリス独自の標準を発表した. 本研究は,JSPS科研費 18K11965(基盤研究C)「近代イギリスにおけるデザインのための色彩規格とナショナリズムの研究」による.