日本色彩学会誌
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44 巻, 3+ 号
日本色彩学会第51 回全国大会カラーポッド[京都]’20 発表論文集
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日本色彩学会第51 回全国大会カラーポッド[京都]’20 発表論文集
  • 北岡 明佳
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 1-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    白い背景に錯視的な黄色を誘導する効果の強い手法として,ムンカー錯視法とネオン色拡散法がある.両者をそれぞれ独立に適用したデザインと,両者を協調的に適用して効果を高めた新しい錯視表現法とそのデザインをデモする.

  • Chanprapha Phuangsuwan, Mitsuo Ikeda, Wipada Pumila
    原稿種別: Supplement
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 3-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    In the previous paper we reported colors to represent male (5PB4/12) and female(7.5RP5/14) that were obtained from 100 Thai subjects. We then experimented to see if colored sign is better than achromatic sign to detect from far distances. Achromatic signs for male and female figures and chromatic signs, blue male and the red female. Those signs were presented at different 11 viewing distances in the outdoor, from 35 m to 250 m, and subjects responded which sign they recognized by naked eyes and wearing the cataract experiencing goggles. The red sign gave the longest viewing distance. The blue sign appeared black at far distances and gave a similar result as the achromatic black sign.

  • Mitsuo Ikeda, Chanprapha Phuangsuwan, Piyamon Nguensawat
    原稿種別: Supplement
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 7-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    The simultaneous color contrast was investigated for two different stimulus conditions. One was to use a semi-circular surrounding field so that the visual angle of the surround can become very large, larger than 180 degrees. The other was to use a flat colored paper of an extremely large size. The color appearance of the central gray test patch was measured by the elementary color naming method at different viewing distance. The vividness of the test patch color increased for larger visual angle of the surround but the way of the increase differed between the two conditions. The relationship between the test patch color appearance and the surrounding color appearance was same as the result obtained by the two rooms technique an by the afterimage experiment to indicate the simultaneous color contrast takes place by the same mechanism of the visual system, that the SCC phenomenon also occurs because of the brain chromatic adaptation to illumination.

  • 張 宇航, 篠田 博之
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 11-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    色覚異常者の割合は全世界で男性の約5%,女性の約0.5%と言われている.色覚異常者はある色の組み合わせが弁別できず,日常生活において様々な問題を抱えている.これまでBrettelらは,LMS色空間の色を混同色線方向に沿ってある平面へ射影することで2色覚者が見る色をシミュレートする方法を提案している.したがってこれらの対応関係をRGB色空間上で表現できれば,色覚異常者の混同色を検知して色強調などの対応が可能となる.その際,LMS色空間とRGB色空間の間の色変換はXYZ色空間を経由するため,XYZ色空間とRGB色空間の間の関係を事前に得ておく必要があるが,多くのユーザに測色機器を用いたディスプレイキャリブレーションを行うことは現実的ではない.本研究では,ディスプレイRGB色空間に,直接,ユーザー個人の混同色線方向あるいはLMS軸方向と色覚異常強度を求めることにより,測色機器によるキャリブレーションを回避し,ディスプレイ個体差やユーザー個人差を考慮した色覚バリアフリー環境を実現することである.

  • 阿部 朱里, 北堂 絢菜, 篠田 博之
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 13-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    LED照明光源の特徴として多峰性の分光分布を持つことが挙げられる.多峰性分光分布の光源は物体色を色鮮やかに演色し,省エネルギーの照明光源として有効である.一方,人は異なる色の照明下でも物体表面の色を一定に知覚する(色恒常性)特性をもつ.本研究では,2種類の色温度(A光源・D65光源)それぞれに対して分光分布の異なる4種類の計8種類の照明光のもとで22種類の色票の色の見えの評価を行い,光源の分光強度分布が色恒常性に与える影響を調査した.分光強度分布は,ピーク波長をずらした三峰性分光分布(MP)3種類と広帯域分光分布(BB)の4種類であった.色の見えの評価には重み付けカテゴリカル比率評価法を用いた.異なる色温度の照明下での色の見え評価の比較から,ピーク波長が同じ照明間であれば色恒常性は高いこと,ただしどちらか一方が短波長寄りのピーク波長を有する三峰性分光分布の照明の場合は,赤付近の色の彩度が下がり,色恒常性が著しく低下することが示された.また,同一色温度の照明下での色の見え評価を比較したところ,低色温度のA光源下では,光源の分光分布の影響を受けて色相や彩度が大きく変化することが示された.

  • 杉浦 徹, 篠田 博之
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 15-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

     目撃証言は裁判の重要な証拠として扱われるが,目撃者の視覚特性の影響を受けることは重要視されていない.冤罪や真犯人の取り逃がしを防ぐため,視覚特性に着目した目撃証言の信憑性評価指標が求められる.車の運転などの目撃と無関係なタスク実行中の目撃では,目撃者は完全に目撃に集中できず信憑性が低下する可能性がある.そこで本研究では,物体の形状や人相を正しく認識する上で重要な空間解像力が目撃への集中を妨げる二重課題の実行によりどのように変化するか検討することを目的に実験を行った.被験者のタスクは,標的追従課題と方向弁別課題からなる二重課題の実行(追従あり条件),または方向弁別課題のみ(課題実行による影響を見るための統制条件;追従なし条件)の実行である.標的追従課題では,被験者はマウスを使用し“∞”型の 軌道上を移動する円形ターゲットの追従を行った.方向弁別課題では,ランドルト環の切り欠きの向きの判別を行った.照度レベルの低下によって正答率と確信度はともに低下した.追従課題の有無で比較すると,追従あり条件での正答率は追従なし条件に比べて低く,追従課題の実行によって空間解像力が低下したことが示された.

  • 諏訪 勝重, 石田 泰一郎, 好永 恒則
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 19-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    近年,様々な分光分布を持つ光源が普及していく中で,その光源特性に応じた色の見えの変化を評価することは重要である.特に,薄明視における領域では,色の見えの変化が複雑であることが知られている.そこで本研究では,明所視から薄明視に相当する照度レベルにおける色の見えを,異なる分光分布を持つ4種類の光源を用いて比較,評価を行い,光源の分光分布が色の見えの変化に与える影響を検討する.実験は光源とその照度レベルを変化させながら色票の色の見えを回答する被験者実験を行った.被験者の色の見えの回答方法は,カテゴリカル比率評価法を採用した.いずれの光源も照度レベルの低下に伴い,高照度レベルでは緑色と知覚されていた領域に青色と知覚される領域が拡大し,同じように,高照度レベルでは赤色と知覚されていた領域に黄色と知覚される領域が拡大するという変化が見られた.本研究では,これらの色の見えを予測するために反対色応答関数を用いた色認識特性のモデル化を試みた.結果として,反対色応答関数のピーク値を調整する係数と波長方向のシフト量を照度レベルに応じて適切に変化させることで実験結果を良好に再現することを明らかにした.

  • 澁谷 圭太, 溝上 陽子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 23-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    照明が異なった環境でも,物体の色や明るさを正しく安定して知覚できる能力のことを色の恒常性という.これは,視覚メカニズムが,視界の様々な情報から照明色の手がかりを得ることにより,照明色の変化を補正して物体の色を知覚するためと考えられている.色の恒常性の研究は多くあるが,実際の照明空間における物体の立体情報および周囲条件が与える影響については十分に検討されていない.そこで,本研究は,3次元実空間に対して,立体的な物体の色の恒常性において,周囲条件の有無が与える影響を明らかにすることを目的とする.実験では,色温度6500K,2800K,Greenの計3色の照明と,4種類の形状に対して,それぞれ8色分の刺激を準備した.周囲の手掛かりの有無として,真っ黒の背景上に刺激を呈示する,周囲の手掛かりのない場合と,白色で立体形状もしくは平面の物体を周囲の手がかりとして用いた場合の計3条件を用いた.結果より,黒体放射軌跡に沿った自然な照明色どうしの方が,Greenの不自然な照明色より,色の恒常性が働くことがわかった.また,白色物体の手がかりがある場合,特に同じ形状の物体が隣に存在する場合,色の恒常性は働きやすくなる可能性が示唆された.

  • 山下 真知子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 25-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    本研究は視覚から色彩を捉えることで想起される人間の感情に及ぼす影響に関する実証を経て,五感(味覚・嗅覚)や空間の広・狭感,記憶,時間的体感など色彩空間がヒトに及ぼす認知的な問題に迫る.本研究成果により,まだ十分に解明されていない色彩心理効果の定説の裏付けと吟味検討を含めて,抜本的に新しい知見を見出すことが目的の一つである.

    本論はこれらのうち,「時間的体感」の評価結果について報告するものである.方法は立体可視化装置で投影した部屋空間内(高さ3m×奥行3m×横幅7.8mの投影スタジオに間口3.75m の2つの部屋モデル投影)で被験者に時間経過感覚を評価させた.結果,既知の通説である「赤空間は実際の時間経過よりも長く体感し,青空間は実際の時間経過より短く体感する」とは合致しない結果となり,「赤空間は実際の時間よりその経過を短く感じ,青空間は実際の時間よりその経過を長く感じる」とする経緯を報告する.

  • 永井 岳大, 角田 佳菜, 田代 知範, 山内 泰樹
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 29-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    色順応とは,特定の色(順応色)を見続けた後に色の見えが順応色とおよそ反対色方向にシフトする現象のことである.色順応にはvon Kries順応に代表されるように錐体や錐体拮抗(反対色)メカニズムが強く関連する.一方,時空間的に色度や輝度が変動する視覚刺激に対しては,その変動成分に応じて色の知覚的コントラスト(例:赤緑の知覚的彩度)が変化する現象が生じる.この現象はコントラスト順応と呼ばれ,脳の色情報表現を調べるツールとして使われてきた.本発表では,輝度と色度の対応関係が複雑に時間変化する一様刺激による順応効果について紹介する.例えば,高/中/低輝度に対して別々の色度を持つように時間変化する刺激に順応すると,あたかもそれらの輝度に対して別々に色順応したかのように色の見えが変化する.しかし,このような色順応の輝度依存性現象は,順応刺激中の輝度と色度の対応関係によって生起するかどうかが決まる.さらに,色順応の輝度依存性の生起/非生起は,脳内色表現の多チャンネルモデルによる予測とよく一致する.これらの結果は,我々の日常における色の見えに脳内色表現の多チャンネル性が関わることを改めて示唆している.

  • 倉田 明浩, 田村 太幹, 溝上 陽子, 平井 経太
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 33-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,ipRGC(内因性光感受性網膜神経節細胞)と照明への色順応や色恒常性との関係について実験的検証を行った.実験は,Pearceらの研究[Plos One, 2014]と同様に,色恒常性が働くほど照明色変化に対する色弁別能力が低くなるという仮定のもとで行った.実験刺激となる照明の分光分布はプログラマブル分光光源を用いて作成した.参照刺激はCIE D65の昼光の分光分布,テスト刺激は6000Kと7000Kの(1)昼光の分光分布,(2)CIE XYZ値は同じでipRGC刺激量のみ減少させた分光分布,(3)CIE XYZ値は同じでipRGC刺激量のみ増加させた分光分布である.これらを白色板およびカラーチャートに投影し,被験者は参照刺激とテスト刺激の色弁別が可能かを実験した.実験結果より,通常の6000Kおよび7000Kの昼光の分光分布下では,D65との色弁別が可能であったが,CIE XYZ値は変化させずipRGC刺激量のみをD65に近づけた場合,色弁別が困難となった.この結果より,ipRGC刺激量が照明に起因する色弁別や色恒常性に影響することが示唆された.

  • 髙橋 直子, 陳 旭, 元村 祐貴, 平松 千尋
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 37-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    色覚間で色刺激に対する神経応答の多様性や共通性を明らかにする目的でオドボール課題を行い,脳波を計測した.刺激は均等色度図CIE1976u’v’上で灰色背景D65から距離が等しく異なる3点を選んだ.標的刺激には2型2色覚が3色覚よりも顕著性が高いと予測される青緑と3色覚にとって顕著性が高い色相の一つである赤を選択し,標準刺激には緑を選択した.刺激の輝度は5段階に振り分け,中間の輝度値に背景D65と同じ輝度値を用いた条件と,中間の輝度値に参加者ごとに測定した背景と刺激の等輝度値を用いた条件の2条件で行った.標準刺激が主に呈示される中で,低頻度で出現する標的刺激にボタンを押して応答を求め,反応時間を記録した.事象関連電位(ERP: event-related potential)として,3色覚では注意の配分に関連するP3成分が赤に対し青緑よりも短い潜時で出現し,赤に対する顕著性の高さが示唆された.反応時間も赤に対し有意に速い応答が認められた.2型3色覚のERPは反応時間が長く,明確な神経応答が得られなかった.2型2色覚はボタン押しのあった試行に限定したERPで赤に対して高い振幅のP3を示した.これは赤に対する顕著性の低さから注意を高めたことが反映されたと考えられる.

  • 市原 恭代, 坂本 隆
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 40-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    石原表をパスする多くの人々は,赤色を眩しく,明るく,目立つ,鮮やかな色として認識している.そのため,赤色を同程度の灰色と比較して同じ程度の明るさの色を選ばせるとより明るい灰色が選ばれることが多い.この研究では,多くの人が感じる赤のまぶしさ,鮮やかさ,明るさが,赤の種類によってProtanとDeutanでどの程度暗くなるかを研究した.Protanでは,すべての色に対し明度の差が大きく,赤が暗く見えていた.しかし,少しでも青の成分が加わると,明度の差が小さくなった.Protanにとって「赤」は,青みの加わった「紫」に近い色の方が,実際の明度に近い明るさで感じると考えられる.黄みの場合,黄みが多少加わっただけでは,差が小さくならないことから,「黄」は感じる明度に強くは影響しないと考えられる.DeutanはProtanと比べて,全体的に明度の差が小さいが,青みが加わると,実際の明度により近い明るさで見えることはProtanと共通した結果であった.

    結論:1番暗く見える赤は,ProtanとDeutan共にL:81.17,a:28.29,b:14.58であった.

  • 水山 諒, 篠田 博之
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 44-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    物体表面に対する明るさ知覚は色の見えのモードと深く関係する.例えば,境界から外側に向けて低下する輝度勾配に囲まれた領域は,一様な輝度で囲まれた領域に比べて明るく知覚され,場合によっては光源色モードに知覚される.これはグレア錯視と呼ばれ,光源から光が発散する状態を輝度勾配で模擬したことで生じると考えられる.光源色モードの特徴のひとつである質感の欠如から,本研究では質感を操作することで物体色から光源色モードへの遷移や明るさの向上が生じるかどうかを検討した.実験では,テクスチャ画像に様々な分散値のガウシアンフィルタを適用してぼかすことで質感を操作した.明るさ向上効果は,異なる質感をもつ刺激の間の主観的等価点,つまり同じ明るさに知覚する際の輝度値を求めることで評価した.また,色の見えのモードは,輝度を様々に変えて色の見えのモードを回答させ,物体色から光源色モードに確率的に遷移する心理計測関数を求めて質感の異なる刺激間で比較した.結果から,ガウシアンフィルタの分散値に応じて質感が失われ,特定の範囲で明るさの向上がみられること,また,より低い輝度で光源色モードへの遷移が生じることが示された.

  • 須長 正治, 米田 睦, 佐藤 雅之
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 47-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    1型および2型2色覚は,赤緑方向に混同色を持つにもかかわらず,大きい刺激を長く観察すると,3色覚類似の色応答を示す.この現象に対し,我々は,ipRGCの寄与という仮説を検討した.装置に4原色の色表示システムを用い,LMS錐体とipRGCの刺激値を独立に変化させた.被験者は,白色LEDで照明された刺激背景となる白色の紙の開口を通して,刺激を観察した.刺激呈示時間は2秒であった.基準刺激のLMS錐体刺激値とipRGC刺激値を,周辺白色のL,M,S錐体刺激値の0.4 倍,ipRGC刺激値の0.42倍とし,L錐体とipRGC,M錐体とipRGCの刺激値コントラストを変化させ,色の見えを測定した.被験者は,緑,薄い緑,赤でも緑でもない,薄い赤,赤の5者強制選択で応答した.2型2色覚が実験に参加した.Lコントラストが上がる,またはMコントラストが下がると赤応答,その逆の条件で緑応答が得られたが,ipRGCコントラスト増減分に対しては,色応答の明確な傾向は認められなかった.このことから,我々が調べたipRGCコントラスト範囲内では,2色覚の赤-緑色応答にipRGC刺激量は寄与していないといえる.

  • 陳 沢庶, 高橋 良香, 溝上 陽子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 50-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    照明の分光分布を制御することにより,室内物体を鮮やかに見せることができる.しかし,先行研究において,照明変化直後は物体の鮮やかさの見えが変化しても,照明空間に順応すると,変化前の見えに近づくことが示された.ただし,色の見えの変化は小さかった.この要因として,テスト刺激の彩度の影響が考えられた.そこで本研究では,彩度の異なる刺激を使用し,順応効果に対するテスト刺激の色と彩度の影響を検証した.色温度がほぼ同じで分光分布が異なるRGBLED(赤緑彩度強調型)とBlackbodyLED(黒体放射型)の照明条件を用いた.色刺激は,橙,紫,青緑,黄緑,それぞれマンセルクロマ6と2の色票,合計8枚とした.応答は,エレメンタリーカラーネーミング法により行った.RGBLED照明下で充分順応した後(応答1),照明がBlackbodyLEDに切り替わった直後(応答2),BlackbodyLED照明下で充分順応した後(応答3)のタイミングで応答を取った.その結果,全ての色票において,鮮やかさ知覚は,応答1から応答2になると下がり,応答3になると上がって応答1に近づいた.これは,照明の彩度変化に対する順応効果が得られたことを意味する.また,色票の色と彩度によって順応効果に系統的な違いは見られなかった.

  • 磯見 麻衣, 廣内 綾, 伊與田 浩志, 酒井 英樹
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 52-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    天然由来の建材・食材など平らで均一な測定用試料を作ることが困難な物体の色彩及び光沢を非接触で測定する方法を検討する.これまでに,発表者らは,ドーム型照明と光トラップ(光吸収体),デジタルカメラを用いた非接触方式の二次元色測定装置の開発を行ってきた.ドーム型照明装置は,大きさ261×174 mmの試料台を有した直径690 mmのアクリル製白色ドーム内に光トラップ(光吸収体)を設けている.得られた画像から,画素ごとに最も明るいものと暗いものを合成することで,SCI,SCE画像を構築する.

    本研究では既往研究の改良として,自動化と詳細な精度検証を行った.自動化では,これまで手動で移動させていた光トラップ(光吸収体)を電気モータによる移動とし,所定の位置ごとに自動で,デジタルカメラを用いて二次元画像を取得できる機構を導入した.また,自動化された装置の測定精度を,カラーチェッカー色票及び光沢サンプルを用いて評価した.その結果,色彩については,試料台内の位置によらず,平均色差が2.7以下の精度で測定できること,光沢度については,接触式光沢度計で測定される鏡面光沢度とは性質が異なることを確認した.

  • 酒井 英樹, 伊與田 浩志
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 56-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    天然由来の材料など,平らで均一な測定用試料を作ることが困難な物体の色彩,光沢,再帰反射を同時に測定する方法を提案する.平らでない物体をそのままの形で測色するには,非接触測定が必要になるが,照明は別途用意しなければならず,測定精度を担保することが難しい.この問題に対して,我々はこれまでに積分球を模した内壁が白色のドーム型照明を用いることで,陰影のない状態で色彩を測定する方法を提案し(2017年大会その1),さらに,正反射光を制御する光トラップを設置することで光沢を測定する方法を提案してきた(同その2).

    本報告では,その改良として,自動化に続き(2020年大会その3),半球化によって大面積試料へ対応させるとともに,複数の光トラップ(光吸収体)を配置し,正反射光と再帰反射光とを発生させる照明光を個別に遮ることで,色彩,光沢に加えて,新たに再帰反射を測定することを提案する.従来,色彩値,光沢度,再帰反射性の測定には,光学系が大きく異なる測定法が使われてきた.しかし,本測色システムは,同一の光学系を使った測定であり,同一精度で同時測色が可能であるという特徴を持つ.

  • 山路 金之介, 片山 一郎, 西 省吾, 土居 元紀
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 58-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,白色物体表面のテクスチャが白色知覚に与える影響を明らかにすることを目的とした.LCDを用いて,輝度変調によってテクスチャを表現した白色刺激と無地の無彩色刺激とを並置し,より白く見える方を被験者に選択させた.テクスチャのパターンは,画布や絞り染めの凹凸など3種類用意し,それぞれ縦横3×3分割,9×9分割,27×27分割,63×63分割,189×189分割してランダムに再配置することで,輝度ヒストグラムを変化させずにテクスチャの異方性のみを変化させた.

    視感評価の結果,分割再配置をしていないオリジナルのテクスチャ刺激の白色感は,その平均輝度より7%から10%高輝度の無地の無彩色刺激と同等であった.テクスチャを構成する輝度の低い領域は,低明度の表面ではなく白色表面の凹凸によって生じた陰影と知覚され,平均輝度よりも明るい刺激と等価な白色感が生じたと考えられる.また,テクスチャの分割再配置によって異方性が低下すると,この効果は減少した.これは,異方性の低下によって白色表面の凹凸に起因する陰影としての知覚が減少し,様々な輝度の画素が不規則に存在する刺激と知覚されたことによると考えられる.

  • 小野 郁美, 藤枝 宗, 原田 修
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 60-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    一般的な工業製品における「黒」は重厚さや高性能を表現する場合に多く用いられる.自動車に於いても,高級感や洗練されたイメージを表現する目的で幅広い車種に展開されており,ホワイト,シルバーに次いで人気が高い.自動車ボディカラーの黒塗色は漆黒性が求められる一方で,自動車ボディ形状をより魅力的に見せるようなエフェクトブラックも好まれている.エフェクトブラックとはアルミフレークやパール顔料などの光輝材を用いた質感を有する塗色であるが,グレーとの領域が曖昧であり塗色開発時の課題であった.そこで,自動車ボディカラーにおけるエフェクトブラックの領域を数値として定義する検討を行った.具体的には,ブラックを意味するワードが塗色名に含まれた自動車ボディカラーを抽出し,カラーデザイナーによる官能評価を行った.その結果,「測色角度25度の明度≦19」「測色角度75度の明度≦8.5」がエフェクトブラックと言える領域であることがわかった.その研究結果を,既存光輝材・通常塗装工程の意匠関係を整理して自動車ボディカラーに相応しいエフェクトブラックの開発に活用している.本発表では,その研究内容について報告する.

  • 大住 雅之, 粟野 由美
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 62-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
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     筆者らはこれまでに絹の綸子や緞子の和装,茶道具の一つである帛紗の分光特性と質感印象を調べ,それらが仕草によって時間的空間的に形状や艶めきと陰影を変化させるさまを「綺麗」とする感受性について考察してきた.変化に誘発される「綺麗」は,螺鈿,蝶や甲虫,鳥の羽根など天然の構造色素材を用いた美術工芸品にも見受けられる.本研究では,A.自然な状態での孔雀羽根(上尾筒),B.上尾筒の後羽根部の羽枝のみを水平に重ね並べた試料,C.帯匠・誉田屋源兵衛製「孔雀羽根織帯」の孔雀羽根織部分,の光学的特徴を,顕微鏡を用いての照明幾何条件に基づく微細構造観察と,変角分光イメージング装置を用いての構造色の分光特性,及びCIELAB空間上の分布を調査した.3)に通じる2)について,照明の幾何条件が垂直方向15°から75°に変化すると赤みから緑みへと反対色の色相変化を引き起こし,また方位方向の変化にはあまり依存しない事を確認した.眼状紋の硬く密で光沢感ある羽枝による分裂補色配色は華やかだが,先述した綺麗感は,眼状紋部より疎らながら羽枝が長く小羽枝も広がって空気に揺れる後羽根部羽枝の光輝感を伴う色相変化により向上すると推察される.

  • 眞鍋 幸菜, 原田 幸一, 東 吉彦
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 66-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    印刷物の色評価用として高演色型LED照明への移行が進みつつあるが,演色評価数が同じでも印刷物の色の見えが異なるため,蛍光灯との差の少ないLED照明が求められている.本研究では,高演色型蛍光灯と高演色のLED照明における印刷物などの色の見えを比較,評価した.蛍光灯にアイグラフィックス社のアイベルライン(Ra97)を,LED照明に京セラのCERAPHIC(Ra96)を用い,並置した2台の照明ブースそれぞれに設置した.LED照明は調光器を用いて,蛍光灯とほぼ同じ照度の約1100[lx]に合わせた.客観評価用に,印刷の色域をほぼカバーするISO12642カラーチャートの印刷物の分光反射率を測定し,蛍光灯とLEDの分光分布データを用いてXYZ三刺激値を計算,L*a*b*値を算出して両者の色差を求めた.746色の色票に対し,最大色差1.94,平均色差は0.53であった.また,Macbeth Color Checker(24色)を用いて両光源下での色の見えを目視比較した結果,LEDの方が蛍光灯よりやや青みに色相がずれて見えることがわかった.これは,LEDの紫側の発光分布の影響によるものと考えられる.

  • 佐々木 柊, 朝原 裕樹, 箕田 大輝, 三栖 貴行
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 70-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

     白い背景に錯視的な黄色を誘導する効果の強い手法として,ムンカー錯視法とネオン色拡散法がある.両者をそれぞれ独立に適用したデザインと,両者を協調的に適用して効果を高めた新しい錯視表現法とそのデザインをデモする.

  • 松山 聖太, DOZAN11 , 三木 学, 青柳 臣一, 日髙 杏子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 74-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    本発表では,情報デザイン学のアプローチから,質問票とスマートフォン・タブレット用アプリmupic(2019, 制作開発:DOZAN11,三木学,青柳臣一)を使った色彩と音の連想についてのアンケートを行うための調査法を検討する.調査目的は,画像の色から音楽を自動生成するアプリmupicのユーザインタフェースにおいて,色彩に妥当な楽器,テンポ,曲調ジャンルを割り振るための資料データを得ることである.色彩から連想される楽器の音色や音階の傾向を検証する.年代差,性別,好きな音楽ジャンルのコホート分析を通じ,色彩と音を関連させるデバイスや自動生成アプリの開発や改善,更新に貢献する.本調査は,色聴という一部の人間に発現する色彩に音の感覚が付随する状態を発見する調査ではなく,一般的な人が色で連想する音を調べる調査である.本発表予稿では第1報として,この調査手続きとユーザインタフェースでの選択肢の考え方を発表する.

  • 趙 漢青, 篠田 博之
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 76-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    現代社会においてPCやスマホなどのデジタル機器は必須であり,メディアやインタフェースとしての視覚・色彩情報は重要である.本研究では変調伝達関数(Modulation Transfer Function, MTF)計測によるデジタルカメラの空間解像特性を色彩次元に拡張し,色彩画像の入力機器であるデジタルカメラの空間解像特性の評価手法を開発する.

    本研究は現在MTFを計測する最も一般的な方法であるエッジ法を用いた.非常にシャープな色のエッジを有する画像を入力画像としたときの出力画像を解析することで,イメージングシステムのEdge Spread Function, ESFを取得することができる.このESFを微分することでLSFが得られ,さらにLSFを1次元フーリエ変換することでMTFが得られる.

    本研究では,デジタルカメラを同一条件に設定し,ピントが合っている状態とピンボケの状態で,さまざまなエッジ刺激を撮影し,それぞれに対してR,G,BチャネルのMTFを求める.

  • 小寺 晴美, 篠田 博之
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 79-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    色覚異常者の体験している色を正常3色覚者が正確に予想することは容易ではない.そこでプロジェクタとカメラからなるシステムを用い物体上に色覚異常者の見ている色をシミュレートすることを考える.これにより,実環境において色覚異常者の知覚色を共有体験することができる.その際,適切な照明光を照射するには,物体表面の反射特性を事前に得ておく必要がある.本研究では,まず初めに複数の白黒縞画像の投影と撮影を繰り返すグレイコード投影法により,プロジェクタとカメラのピクセル位置の対応関係を得た.つぎに,複数種類の照明光を投影した状態で撮影し,プロジェクタRGB入力値とカメラ撮影画像のRGB値を比較することで対応の取れたすべてのピクセルにおける反射特性行列を推定した.これにより,プロジェクタカメラの対応の取れた個々のピクセルにおいて適切に色覚シミュレーション照明を投影することができ,実用的な実環境色覚シミュレーションが可能となる.

  • 寺嶋 優太, 山田 祥理, 田代 知範, 山内 泰樹
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 83-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    印刷機やディスプレイではそれぞれ再現できる色域が異なる.色域が異なる場合,色域マッピングにより色再現のための色変換が行われる.色域が異なっても同じ色の印象を与える再現は「一貫した色再現」と呼ばれる.マッピングの精度は,色差が小さい場合は色差式で定量的な評価が可能であるが,色差が大きい場合は適切に扱うことが難しく新たな指標が必要である.また,一貫した色再現の評価法は確立していない.先行研究では,この問題を対処するために,色域ごとに近い印象の色を結んだトレンドラインが提案され,トレンドラインからの色差によって色の一貫性再現の程度を定量的に評価できる可能性が示唆された.しかしながら,既存のトレンドラインではトレンドライン上に存在しない色に対する一貫性再現を直接的に評価することはできない.本研究では,トレンドライン上に存在しない色の色再現評価を行うために,トレンドラインから外れた色を含む色群に対して,一貫性の評価実験を行い,トレンドラインとの差異が,一貫性評価に影響を与えるのかを調査した.その結果,色群の一貫性の評価は均等色空間上でトレンドラインとの距離や乖離度に依存することが示唆された.

  • 土居 元紀, 太田 諄, 西 省吾, 来海 暁
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 87-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,ディープラーニングに基づく画像からの領域抽出手法であるMask R-CNNを用いて,風景画像から草木領域を抽出し,緑視率を求める方法について検討した.緑視率とは人の視野に占める樹木など緑の面積の比率である.これまでは,主に手動で画像中の緑領域の抽出が行われてきた.また,以前著者らが提案した色とテクスチャを用いる方法では,幹の部分の検出が困難だった.今回,Mask R-CNNを用いて木や草を識別し,その検出領域から緑視率を求めることを提案する.Mask R-CNNを用いた草木領域抽出としては,coco-datasetを用いた学習例において鉢植え(potted plant)の抽出があるが,風景中の木などを検出するには不十分だった.今回,改めて木および草のクラスを設け,それぞれの学習画像群について手動で領域を指定し,学習を行った.検出においては,検出領域が複数ある場合は論理和をとって領域を統合し,画面における検出領域の割合を緑視率として出力した.木と草の2クラスを用いた学習結果を用いた実験の結果,テスト画像内の木や草領域の検出に成功し,人工物である緑色の看板とは区別できることがわかった.ただし,樹木が重複するような場合には検出が困難であることがわかった.

  • 吉谷 文孝, 伊藤 隆晃, 中矢 大輝, 佐鳥 新, 大池 信之, 野呂瀬 朋子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 89-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    ハイパースペクトルカメラ(HSC)は,物質の色合い(スペクトル)情報と空間情報を同時に取得できる宇宙産業由来のセンサーである.近年医療分野での応用が期待されており人の目では識別することのできない物質の特定や分類に適している.本研究で大腸癌の病理標本をHSCで撮影し遺伝子検査を実施することなく,KRAS遺伝子の陽性,陰性の識別を実施する.なお,KRAS遺伝子とは細胞増殖を促進するシグナルを細胞内で伝達するという役割を持つ遺伝子であり,KRAS遺伝子の陽性・陰性は最適な化学療法を選択する際に重要な情報である.HSCで撮影された大腸癌を細胞抽出により平均スペクトルデータを取得しKRAS遺伝子の陽性,陰性のデータを教師データとテストデータ(7:3)に分割した.その後,機械学習の一種であるランダムフォレストを用いることで71%の識別精度が得られた.また,ランダムフォレストで得られる特徴量重要度から識別にもっとも影響を与えている波長を特定し,T検定を行った結果,大腸癌のKRAS遺伝子の陽性,陰性のスペクトルに有意差があることも明らかになった.本発表では,識別精度の向上に向けた研究についても報告する.

  • 神谷 健太郎, 伊藤 隆晃, 中矢 大輝, 佐鳥 新, 尾崎 大介, 米盛 葉子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 93-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    ハイパースペクトルカメラは,対象物から入射する電磁スペクトルを高い波長分解能で検出できるVNIR(可視および近赤外)センサーである.近年医療分野での応用が期待されており人の目では識別することのできない物質の特定や分類に適している.本研究では,ハイパースペクトルカメラを生体分野に応用し,肺癌のHE染色標本をハイパースペクトルカメラで撮影し,免疫染色を行うことなく免疫染色マーカーp40,TTF-1の陽性,陰性の予測をランダムフォレスト,XGboost, LightGBM,サポートベクターマシン4つの機械学習手法で試みた.また,その際に構築したランダムフォレストの機械学習モデルで得られる特徴量重要度を用いて識別に重要な因子の特定を行った.症例数は診断時にTTF-1,p40免疫染色を要した66例において,TTF-1(陽性29例,陰性30例),p40(陽性29例,陰性33例)であり,解析には細胞核の平均スペクトルを使用した.結果としてランダムフォレストが最も識別精度がよく,TTF-1感度82%,特異度68%,一致率76%,p40感度83%, 特異度76%,一致率80%の識別精度を得た.また450nm~650nmにおいてHE染色におけるTTF-1,p40免疫染色の識別性を得られる可能性が示唆された.

  • 塚本 惣一郎, 菅谷 洋司, 日髙  杏子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 97-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,景観色彩の視点から,兵庫県の芦屋川特別景観地区を対象に屋外広告物の色彩計画の変化を検討する.芦屋市は,2009年7月に市全域を景観法で定める芦屋景観地区に指定,さらに主要景観として,芦屋川特別景観地区面積42.6 ヘクタールを定めた.対象期間は,芦屋市屋外広告物条例の施行後である2017年4月から2020年3月までとした.研究目的は,芦屋市民と業者による色彩の選択変化における屋外広告物条例が与えた影響の観察にある.芦屋市民と広告設置する業者が屋外広告物条例に従って行動を起こし,景観色彩上の時系列変化が都市景観にどのような影響を及ぼしたかを考察する.アドビキャプチャーCCのカラー機能を用い,カラーチャートから屋外広告物の色彩計画を都市景観上から評価する.芦屋市屋外広告物ガイドラインの指針として,2021年6月末までに,屋外広告物の工事を規定に定めた条例に基づき改修工事を完了しなければならない.条例に基づき,すでに改修,あるいは改修せずに,行政も市民も景観的に満足なものと,満たせなかったものの配色変化を評価する.色彩規制上の問題点を掲げ,将来の都市景観条例と色彩計画の指針に役立てる.

  • 何 元元, 三上 大河, 田中 豪, 溝上 陽子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 99-
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    肌色は,国・地域に差異があり,暗い色から明るい色,黄色味から赤味まで多様である.先行研究(Yoshikawa et al., 2012)では,赤味を帯びた肌は,黄色味を帯びた肌より明るく見える傾向を示した.しかし,顔の肌色の明るさ知覚が肌色や被験者の多様性にどのように影響されるかは明らかでない.ここでは,日本人と中国人被験者の肌色の明るさ知覚を比較した.実験では,若い日本人女性の平均顔を使用し,4つの肌色タイプのテスト顔を作成した.テスト画像(明度一定で異なる色相を持つ)とスケール画像(各々の肌色タイプの元の色相を持ち,明度が変化する)がタブレットディスプレイ上に並んで呈示され,被験者は,スケール画像の肌色の明るさをテスト画像と一致させるように調整した.その結果,日本人被験者は,黄色の肌よりも赤みがかった肌が明るいという傾向を示した.しかし,中国人被験者の結果はテスト顔によって異なり,明確な傾向が見られなかった.この傾向は,日本在住の留学生の場合も中国在住の中国人の場合も同様であった.したがって,被験者が背景として持つ文化や環境が,顔の明るさ知覚に影響を与えていることが示唆された.

  • 加藤 雅大, 溝上 陽子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 102-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    顔色は人の健康状態や表情等の重要な情報を提供する.Nakajima et al.は,赤みがかった顔は怒りの認識を高めることを示した.しかし,そこではCIELAB色空間のa*方向に大きく色変調しており,自然な肌色の変化の範囲における,顔色が表情の認識に与える効果は検証されていない.よって,本研究では,肌色をメラニン・ヘモグロビン増減方向に変調したとき,表情認識に与える肌色の影響を調べる.男女それぞれについて,無表情から怒り表情に11段階で遷移する連続顔画像を作成した.顔画像の肌色,基準刺激(平均肌色),メラニン増減(M+, M−),ヘモグロビン増減(H+, H−)方向にそれぞれ顔画像を変調し,5種類の肌色条件を準備した.被験者は呈示された顔刺激について「怒っている」か「怒っていないか」を応答した.その結果,先行研究と同様,赤みがかった顔(H+)は怒りの応答を高めた.また,M+も怒りの応答を高め,M−は怒りの応答を抑える傾向が見られた.よって,自然な肌色変化の範囲でも,怒りの知覚に影響することが示された.また,男性より女性被験者の方が,変調刺激間の応答の差がより顕著に見られたことから,肌色が表情認識に与える影響における男女差が示唆された.

  • 昆野 照美, 柿山 浩一郎, 川端 康弘
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 104-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,人間の色相選択には人間の無意識の心理が表出するのではないかという着眼点から,「直感的に選択する色相」と,「余暇活動のアクティビティの選択」には関係があるのではないかとの仮説を設定し,色相とアクティビティの関係を明らかにすることを目的とした.

    具体的には,余暇活動に関する4つのアクティビティ(a,b,c,d)を設定し,aを「一人で活発な活動」,bを「一人で静かな活動」,cを「友達と静かな活動」,dを「友達と活発な活動」とした.次に,大学生190名を対象に「直感的に気になる色」と「やりたいアクティビティ」に関するアンケート調査を行った.

    結果は,赤(v2)と回答した学生が,アクティビティaを選ぶ確率(19%)が高く,アクティビティbに関しては,色相の選択に偏りが少なかった.アクティビティcに関しては,34%が,v18(青)を選んでいる.アクティビティdに関しては,23%がv14(青緑)を選択しており,緑系(黄緑,緑,青緑)は全体の47%であった.「直感的な色相の選択」と「アクティビティ」の関係には一定の傾向があることが明らかになったため,さらに,χ 2乗検定を行った.P=0.027という結果が得られ,統計的に有意となった.

  • 佐川 賢, 信木 理恵子, 芦澤 昌子, 横井 孝志, 土志田 美帆
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 108-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    色彩は,赤で危険を知らせるなど,情報伝達の手段として用いられ,色彩感情はその基礎となる.色による情報は,色弱者を含む多くの人に対して共通であることが望まれるが,色弱者の色彩感情に関する検討は少なく,カラーユニバーサルデザインでもこの点を配慮したデザインが求められる.

    本研究では色弱者の色彩感情を,視覚的な色の見えによる色彩感情と,色名による言語的色彩感情,の2つの視点から検討した.前者は一般色覚者と異なる色の見えを有する色弱者の色彩感情の変化,後者は色名という共通概念や経験の影響,を検討するものである.実験は,SD法により色弱者の色彩感情空間が一般色覚者と類似していることを確認したのち,予め用意した33色の中から,たとえば「危険を感じる色」という課題について,視覚的選択では色票から,言語的選択では色名のみを書いたカードから,選択する.課題は全体で25課題である.

    結果は,色弱者(15名)の視覚的選択は一般色覚者(30名)と比較的類似していた.言語的選択でも両者は類似し,色弱者の色彩感情の形成には色に対する経験や共通概念の要因が強く影響することが判明した.

  • 山下 彩花, 森田 愛子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 110-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    ノートや時間割などにおいて,教科はしばしば色で弁別されるが,教科の色イメージが共有されているのか,どの教科がどのような色イメージを有しているのかは未解明である.本研究では,教科の色イメージを調査し,その一致度や世代による違いを検討した.また,教科から当該の色をイメージする理由についても検討した.10代から80代の参加者313名を対象に,国語,数学,理科,社会,英語の5教科について色イメージ調査を行った.各教科について,基本色彩語13語からイメージする色を選択させ,選択理由を記述させた.その結果,一致度が最も高かったのは数学で,約半数が青を選択した.理科は緑,社会は茶が最も多く選ばれた.国語と英語はばらつきが大きく,複数の色が同程度選択された.教科の色イメージは必ずしも一致しないことがわかった.年代別にみると,数学以外では,年代によって色イメージの違いが比較的大きいことが明らかになった.色の選択理由としては,具体的な物以外が原因と考えられる「教科そのものに対する印象」「なんとなく」「理由なし」の合計が85%であり,色イメージが形成された後には具体的な理由が想起されない場合も多いことが示唆された.

  • 山下 岳, 田中 緑, 堀内 隆彦
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 112-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    物体の所望の色信号を強調するために,特定の波長を強調した光源を「機能性光源」と呼ぶ.食品の分野では,これまで肉や魚などの生鮮食品の嗜好性向上を目的として,機能性光源の研究や開発がされてきた.本研究では,全世界で消費されており,種々の種類を有する乳製品のチーズを対象とした機能性光源の設計を目的として,照明がチーズの嗜好性に与える影響を反射光から解析した.10種類のナチュラルチーズの分光反射率を測定し,分光反射率形状と色分布に基づいて,合計5種類のチーズを解析対象とした.評価実験では,色温度と照度を固定したメタマーな照明を設計してチーズに照射し,その嗜好性を基準照明に対する相対評価として5件法で評価した.チーズが好きと回答した被験者4名をA群とし,残り4名をB群とした.実験の結果,A群は特定の照明下のチーズを好み,安定した評価が得られた.さらに,A群の評価を解析した結果,反射光が特定の色度領域に入る制約条件のもと,嗜好性と相関のある波長帯を制御することによって,チーズ好きの人の嗜好性を向上する照明を設計できる見通しが得られた.

  • 土山 和華子, 井上 容子, 吉田 桃子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 114-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

     【目的】生活空間は,内装や什器で彩られている.色や照明に対する心理評価には様々な知見があるが,色彩が照明に与える影響に関する知見は乏しいため,本研究では,視野内の色分布が照明の評価にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目指す.

     【方法】照明条件は,照度800 lx・色温度5700K(LEDシーリングライト)である(全面白).実験は,2分間の暗順応後,視線高さ1100mmに呈示する視標の中心を注視させる.この視標の大きさ(6段階)や色の違いを色分布の違いとする.視標とその背景の一方を必ず白とし,色は赤・青・白・灰・黒の5色であり,呈示直後と5分後に,視標と照明それぞれの明るさ・色味を評価させる.被験者は正常色覚の女子学生6名である.試行回数は3回である.

     【結果】色視標の明るさや色味は色の分光反射率に対応する評価が得られた.一方,照明の明るさと色味は,注視する視標の色や分布によらず変わらない.即ち,色視標呈示部分の鉛直面照度・色温度は色分布によって変化しているにも関わらず,照明の評価と相関がみられない.これは,視野内に白色が存在していることが原因と考えられる.今後は,照明条件も変数に加えて引き続き検討する.

  • 石原 久代, 加藤 千穂, 鷲津 かの子, 浅井 徹
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 118-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    カラーコーディネートにおいて色彩調和は非常に重要であるが,色彩調和には多くの理論があり,用いられている表色系の色相の等差性に問題があるものも多い.そこで本報では,色相角を均等にした試料を作成し,2色配色として色相の調和について視覚評価を行った.さらにその結果を基に色彩調和論構築のためにディープラーニングの適用を試みた.

    研究はL*a*b*色空間において色相を20分割した試料を用いて配色実験を行った.試料はプリントした色票を分光色彩計にて測色し,各色票間の色相角を均等になるように調色し,高彩度域20色,高明度域20色を作成した.実験は,それらを2色配色し,高彩度域400試料,高明度域400試料をN6の背景に提示し,200名の被験者から6段階の調和度データを回収した.得られた計160,000データを基にディープラーニングを試みた.

    その結果,調和領域においては高彩度も高明度も同一色相が最も調和し,色相が離れるほど評価は下がり,最も遠いdh180度の評価が最も低く,これまでの色彩調和論にある対比の調和領域は存在しなかった.また配色した2色のL*a*b*値を入力データとして調和度のディープラーニングの予測結果は,比較的良好な成績が得られた.

  • 越中 宏希, 瀬谷 安弘, 篠田 博之
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 120-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー
  • Meihui Zhao, Xiaohong Zheng
    原稿種別: Supplement
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 123-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    When movies enter the color era from black and white images, color has become a unique and important part of the language of video. Color is a perceptual visual element which is silent but infectious, infecting audiences potentially.

    Blue is one of the three-primary colors and has a vital position in the color world. It is the spokesman for negative energy, affecting people's mood, and even personality. This article analyzes from the perspective of movie audiovisual language, how directors use blue to express in movies.

  • 川澄 未来子, 浅野 晃, 浅野(村木) 千恵
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 127-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    音楽において不協和音から協和音へ音が移ることで緊張感を緩和することを『解決』と呼ぶ.協和音を単一で聴くよりも聴者に深い満足感を与える効果があると言われている.先行研究(浅野ら, 2017)では色彩においても同様の効果があると仮定し,不調和配色の直後に調和配色を提示することにより,調和性がより向上するかどうかを,3色配色を使って調べた.その結果, ごく少数の配色で効果が確認されたものの,生じる条件が明確でなかった.ここでは,これまでに用いてきた3色配色の提示パターン(六角形を3つ組合せたパターン)とは別のパターン(六角形を平面全体に敷き詰めた蜂の巣型,および,ストライプ型)を考案し試したところ,従来のパターンより調和性を安定して判断しやすくなり,『解決』による調和性向上の効果を捉えやすくなることがわかった.次は,新しいパターンを用いて,調和性向上に効果のある配色条件を詳しく調べたい.

  • 櫻井 将人
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 129-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    食品のほとんどは様々な包装紙で覆われ,その色を含めた質感も食品のイメージに影響していると考えられる.各種包装紙の質感を模擬した色刺激の味覚的な印象を評価することで,先行研究の結果も踏まえ,統合的に食品パッケージへの応用が期待できると考えられる.そこで,本研究では,各種質感を模擬した色刺激の味覚的な印象を明らかにし,パッケージデザインへの応用に対する知見を得ることを目的として,包装紙の質感を模擬した色刺激に対して,基本5味(甘味,酸味,苦味,塩味,旨味)の印象を主観評価により調査した.結果として,苦味においては,明度が低く,GY系の色で評価値が高くなり,先行研究の結果と一致する傾向を示したが,質感よりも色自体の印象を強く示す傾向があった.一方,甘味においては,ホイル紙のような光沢感があるRP系の色で他の質感を模擬した色刺激に比べ評価値が高くなり,質感の影響を示唆する刺激もあった.これらの結果を踏まえ,包装紙の質感を模擬した色刺激の味覚的な印象やその応用を検討する.

  • 若田 忠之
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 131-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    先行研究において,香りに対する調和色の選択傾向を変数として香りを分類した場合に,調和色が類似する香りはその印象も類似することが示された(若田;2019).そこで本研究ではより詳細に香りと色の関係性を対応づけることで,香りの分類及び色による表現が可能であるかを検討することを目的とした.実験刺激としてフレーバーを中心とする30種類を用いた.評価方法は色の評価用のアプリケーションを作成した. 色はPCCS表色系よりトーン共通表記(12),色相共通表記(12)および無彩色の25パターンを用いた.評価画面は2画面で構成され,画面1ではトーンおよび無彩色,画面2では色相を用いた評価を行った.評価方法は提示された香りに対して各色がどの程度当てはまるかを回答し,画面全体の色のバランスで香りを表現させた.若田・齋藤(2018)の印象評価のデータと合わせて分析した結果,トーン,無彩色,色相によって表現された香りについて,トーンおよび無彩色による分類,色相による分類ではそれぞれ7グループに分類された.また,香りを色で表現した評価得点を説明変数として香りの印象を予測した回帰分析において,トーンと色相で影響を与える印象が異なることが示された.

  • 裵 湖珠
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 135-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    本本研究は日本の「擬情語」の言葉で「ワクワク」を選び,わくわく感を視覚的に表す時にどんな色で表現するかを調べるために最初は日本国内を調べた.続いて日韓の大学生を対象にして比較検討を続け,今回は日本と中国の大学生を対象にして,両国の共通点や違いなどを比較検討した結果を報告する.第50回日本色彩学会全国大会で発表した日韓の比較では日本で一番選ばれた色は「赤色」であって,韓国の場合は「ピンク色」が一番で選ばれた色であり,2番目選ばれた色が「赤色」であった.今回の日中の比較では両国共に「赤色」が一番選ばれた色で特に中国の場合は全体に占めた率が36%でもあり,3国の共に一番選ばれた色では「赤色」が占めた率が高かった.性別的でも日中共に男性は「赤色」が一番に選ばれた色で,女性の場合は日本が「オレンジ色」,中国は「ピンク色」であった.一番選ばれた色の上位3位まで日本は赤色,オレンジ色,黄色で,中国は赤色,ピンク色,オレンジ色で両国共に暖色系色が多くを占める.先行研究で気になった黒色が中国でも見られ3国の大学生は自由に描く項目に対し,色を表現する前に形を先に考え,形を描くためのアンダーラインを黒で描いている事が影響しているではないかと思われる.

  • Poan Chen, Xiaohong Zheng
    原稿種別: Supplement
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 137-
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    In this paper, through the analysis of the poster color of the classic, jazz and rock music festivals in different ages, the synesthesia characteristics of music and color are explored, and the poster color is extracted by software. It is found that different music festivals have different poster color styles. For example, rock music mostly uses bold colors and bright contrast colors, while classical music mostly uses overt natural color features. Like music, the rhythm of rock gives people a sense of excitement, while the rhythm of classical music is more fluent and balanced. Through case analysis, it is concluded that color is the external spiritual embodiment of music.

  • 西川 恵 , 北岡 明佳
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 141-
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    現在, 博物館・美術館の展示には資料保存の観点から50lx, 150lxの照度が推奨されるが, 日常生活空間が1000lx前後である(安齋, 2013)ことから多くの展示では比較的暗い照明が用いられているといえる.これに対し作品の印象の観点から西川・北岡(2019)は照度・色温度による絵画の印象変化を検討し, 特に照度については50lx, 150lxより1350lxのとき絵画はより美しい, 快い, 動的な, 好きな, 暖かい, 安心する等と感じられ, 恐ろしさ, 不気味さ, 寂しさは相対的に暗い照明で評価が高くなることを示した.しかし, 多くの博物館・美術館では暗い展示室に行くまでに徐々に目を順応する工夫がされており, 西川・北岡(2019)は絵画を提示した状態で連続して照明を変え, その際順応が不十分であった可能性がある.よって, 本研究では十分な順応時間を設定し絵画の印象変化を検討した.その結果, 美しさ, 好ましさ等は照度により違いがみられず, 西川・北岡(2019)は順応が十分でなく, また前の照明条件と比較が可能なため, 比較による差を捉えたものであった可能性が考えられる.しかし, 動的な, 暖かい等の印象は順応しても明るいとき評価が高く, 不気味さ, 寂しさも暗い照明でより演出されることが明らかになった.

  • 戸倉 三和子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 145-
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    有彩色照明下ではどのように色を知覚しているのかを明らかにするために,色票の知覚色に関する試行実験を行った.有彩色照明下で提示された8つの色票はxy色度図上では有彩色照明の色の範囲に位置するが,多くの条件で被験者の知覚色は提示した色票の色と一致しており,白の色度との相対的な位置により色を知覚していると考えられる.今回の実験条件では,赤,桃(ピンク),橙(オレンジ)で知覚色と色票の色が一致しない場合が多かった.色票の識別に関する実験では,同系色の有彩色照明下で識別しにくい傾向があったが,今回の実験では,どの有彩色照明下でも赤,ピンク,オレンジの一致率が低く,使用する色票や選択肢を検討する必要がある.

  • 水島 涼稀 , 溝上 陽子
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 149-
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    新個体光源の進歩により,多様な形状の照明が開発されている. 照明の形状によって照明条件は変化し, 条件によっては物体の質感を正確に再現できない可能性もある.そこで,本研究では,照明条件の中でも拡散性に注目し, 質感再現に適した照明の拡散度条件を検討する.形や表面特性の異なる物体を日常環境で記憶し,拡散度の異なる照明条件下で比較することで,物体の質感再現に適した拡散度を求めた. 観測者は4種類の物体を,自然光が当たる北窓の窓際と蛍光灯下の室内の日常環境で観察して記憶した.5段階の拡散度の照明条件で,記憶した物体の見え方と各照明下の物体の見え方を比較し,自然さ, 粗さ,光沢感等8項目のSD法による印象評価と,物体の質感再現の忠実さと理想さの評価を行った. その結果,中程度の拡散度範囲で,忠実さ, 理想さともに評価が高く,拡散度の低い非日常的な条件では評価が低くなる傾向が示された. また, 印象評価の結果でも,中程度の拡散度条件での自然さの評価が高くなった. 中程度の拡散度範囲の評価が高くなった理由として, 日常で経験する自然な範囲の拡散度であったこと, もしくは記憶した際の拡散度にマッチングした可能性が考えられる.

  • 阿山 みよし, 川目 康平, 四俵 桃子, 石川 智治, 有本 晃佑, 木村 元春, 越野 誠也, 秦 英夫
    2020 年 44 巻 3+ 号 p. 151-
    発行日: 2020/05/01
    公開日: 2021/09/06
    ジャーナル フリー

    ディスプレイ上の顔画像の肌色の重要性はポートレートなど様々なシーンで増加しており,白さや好ましさ評価に関する多くの研究が行われている.しかしテスト画像数は50枚程度までで,各種の感性評価値が色空間内でどのように変化しているのかは明らかにされていない.本研究では,色空間における主観評価値の変化の様相の把握を目的とし,4種の素肌画像各々についてCIELAB色空間でほぼ均等に分布する343枚の画像群を作成して10名の観察者での評価実験を行った.化粧顔としての肌色として,仕上がりの好ましさ,色の肌なじみ,顔と首の色の違いの評価,基本的色彩属性として,色み(黄色み対赤み)および明るさについての評価を行った.仕上がりの好ましさに関しては,素顔がやや赤みのモデル顔では黄み方向にシフトした点を中心とし,素顔がやや黄みのモデル顔ではほぼ同じ色度を中心として,共にL*を2~4上げた領域が高得点となった.また彩度が低いほど「明るい」評価が高くなり,Helmholtz–Kohlrausch効果と逆の傾向が見られたが,同じ色分布の矩形色刺激ではその傾向は現れず,顔画像特有の特性であることが示唆された.

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