日本色彩学会誌
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日本色彩学会第51 回全国大会カラーポッド[京都]’20 発表論文集
在宅介護の照明環境:夜間の気管吸引作業に必要な照度の検討
西谷 美智子酒井 英樹
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2020 年 44 巻 3+ 号 p. 227-

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抄録

 近年,医療的ケア児は増加傾向にあり在宅で介護する家族には過重な負担が生じている.気管吸引などのケアは24時間必要とされ,特に夜間の介護のための睡眠中断はストレスが大きい.吸引は,ケア児の表情や顔色,唇の色などを観察しながら行うため,室内にはある程度の明るさが必要となる.しかし,明るすぎる照明は睡眠を妨げる.本研究は,夜間の吸引を安全に行いつつ,できるだけ睡眠を妨げない照明環境を検討することを目的として,吸引作業のうち照度の影響が大きいと思われる,顔色確認とチューブの挿管という2つの作業について低照度環境での作業性評価を行った.

 11名の20代女性に対し,水平面照度200 lx,50 lx,12 lx,6 lx,3 lxの5水準で,各照度3分間の順応の後,視力検査,色の識別,チューブ挿入作業,作業の難易度評価を行なった.結果として視力は12 lxから低下し始めたが,色の識別は3 lxでも問題なかった.チューブ挿入作業では照度低下に伴い作業時間が延長する傾向や難易度が高くなる傾向がみられた.今後,本研究で得られた知見を元に,夜間の気管吸引作業に必要な照度の提案を行いたい.

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© 2020 一般社団法人 日本色彩学会
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