日本臨床腸内微生物学会誌
Online ISSN : 2759-1484
食餌性フルクトースは腸内細菌叢を介して実験的大腸炎と炎症性腫瘍形成を増悪させる
西口 遼平塩澤 俊一
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2023 年 25 巻 1 号 p. 11-20

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抄録

炎症性腸疾患(IBD)の罹患率は世界的に上昇しており,西洋型食生活の普及が一因であると言われている。西洋型の食事はフルクトースに富み,IBDの罹患率上昇に関与すると推測されている。近年,高フルクトース食(HFrD)がマウスモデルにおいてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性腸炎を増悪させることが報告された。また,IBDによる慢性大腸炎がcolitic cancerの発症リスクであることから,HFrD摂取は慢性大腸炎を増悪させ,炎症性大腸腫瘍形成を増加させる可能性がある。さらに,回腸炎を有するIBD患者では,小腸に発現するフルクトース輸送体であるGlucose transporter 5(GLUT5)の発現が低下し,小腸でのフルクトース取り込みが制限され,大腸への過剰なフルクトース流入が腸内細菌叢を介して大腸炎を増悪させることが推測される。本稿では,フルクトースの過剰摂取により,1.腸内細菌叢の組成と分布が変化した結果,実験的大腸炎が増悪するメカニズムの解明,2.慢性大腸炎が増悪し,炎症性大腸腫瘍形成が増加すること,および食事介入によりこの効果が軽減すること,3.GLUT5ノックアウトマウスモデルにおいて,腸内細菌叢を介して実験的大腸炎が増悪することを中心に概説する。

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© 2023 日本臨床腸内微生物学会
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