腸内細菌が腸管免疫系を介し,生体の恒常性維持や疾患感受性に重要な役割を担うことが明らかとなりつつある。腸管マクロファージはサイトカイン産生を介し,主に免疫の初期応答に関与するが,誘導されるサイトカインの種類と量は腸内細菌に依存して変化すると推定される。そこで本研究では,単一の腸内細菌がマクロファージに与える影響を評価する目的で,代表的な腸内細菌株による免疫誘導能の違いをin vitro試験系にて評価した。ヒト単球由来の細胞株であるTHP-1細胞を,9種の腸内細菌株でそれぞれ刺激した際に誘導されるサイトカインおよびケモカインを定量した。Akkermansia muciniphila,Bacteroides uniformisおよびParabacteroides distasonisは他の菌株と比較してTNF-α,IL-10,CCL5およびCXCL10の誘導能が高く,菌株の濃度依存的であることが明らかとなった。詳細なメカニズムの解明が必要であるが,本研究結果は単一の腸内細菌を活用した疾患制御の新たな戦略となり得ることを示唆する。