抄録
環境変化が沿岸域の生態に及ぼす影響を研究する一環としての現地調査から、定着後数年が経過し、かなり大きくなったマングローブは、海水中に生育していても、早朝や夜間の葉の水ポテンシャルは海水より高く、蒸散の盛んな日中でも気孔伝導度が大きく、高い光合成を行なっているが、定着後経過した年数が少ない若いマングローブは早朝や夜間の葉の水ポテンシャルはほぼ海水と等しく、日中には葉の水ポテンシャルが低下して膨圧が低くなり、気孔伝導度や光合成速度が著しく低下することを明らかにした。このことから、マングローブが海水域に生育できる条件として陸からの地下水や伏流水によって希釈された海水より高い水ポテンシャルの水が吸収できる必要のあることを推察した。この推察を検討するために、4段階のNaCl濃度条件下でマングローブ植物を生育させ、生長と拡散伝導度、光合成速度、体内水分を比較した。