抄録
前報において, 水稲品種タカナリを用いて個体密度のほぼ等しい条件で, 栽培法, 栽植様式を変えて, 乾物生産特性とそれに関わる性質を検討した. その結果, 分げつ期では, 栽植様式に関係なく湛水直播栽培した水稲は移植栽培した水稲に比較して, 茎数, 葉面積指数(LAI)の増加が著しく, 個体群受光率が高かった. 受光率に相違がなくなった幼穂形成期以後では, 栽培法に関係なく1株1本立て水稲(以下単に1本立て)は1株3本立て(以下単に3本立て)水稲に比較して, 葉身がより直立し, 吸光係数が小さかった. これらが関係して, 栽植様式が等しい時には湛水直播水稲は移植水稲に比較して, そして栽培法が等しい時には1本立ては3本立てに比較して, 地上部乾物重が大きくなり, 子実収量が高くなることがわかった. そこで本報告は他の品種においても同様の傾向が認められるか否かを検討するために, 倒伏抵抗性は大きいがタカナリとは遺伝的背景が大きく異なる品種どんとこいを供試し, 特に栽植様式の異なる湛水直播栽培に着目して乾物生産と収量を比較し, これに関わる性質を解析した.