抄録
ダイズは生殖成長期間中に, 他器官から子実に多量の窒素の再転流が起こることが知られている. この過程において窒素の主要なソース器官である葉はその構成成分の分解など, 一連の老化の過程をたどることとなる. 著者らは前報でダイズ品種エンレイとタチナガハの間で稔実期間中の葉の老化が異なる要因について検討し, タチナガハと比較して葉の老化の早いエンレイでは, 子実の窒素に占める葉由来の窒素の割合が高く, このことがエンレイの葉の老化を促進させると考察した. また, 莢を切除すると稔実期のダイズの葉の老化が抑制されることはよく知られている. 以上のことからダイズの葉の老化には稔実期間中の葉(ソース器官)と莢(シンク器官)の量的なバランスが大きく関与している可能性が考えられる. この点を検討するため本研究は, 莢切除処理(シンクサイズを減少)および葉切除処理(ソースサイズを減少)により葉と莢のバランスを変え, これらが器官の間の乾物分配と葉の緑色程度に及ぼす影響を調べた.