抄録
前報において、コムギはpF2.5〜3.0の低土壌水分条件に生育させると地下部がよく発達し、地上部の生育はほとんど抑制されないこと;出穂期に十分灌水し、その後の登熟期間に降雨を遮断し灌水を全く行わなくても高い乾物生産と約700kg/10a程度の収量をあげること;を報告した。このことからコムギはpF3.0程度の低土壌水分で生育させても乾物生産や収量はほとんど低くならないことが推察される。そこで本実験では出穂前の1カ月間を低土壌水分条件に生育させた後、出穂期に十分灌水し、登熟期は土壌水分が著しく減少しない程度に灌水したコムギ(乾燥区)の生育、乾物生産、収量および生理、生態的性質を、平年の降水量に準じて灌水した湿潤土壌に生育したコムギ(湿潤区)と比較した。