Journal of Clinical Simulation Research
Online ISSN : 2433-054X
原著
院内急変対応への取り組み―院内全職員への心肺蘇生法トレーニングの有効性について
下山 佳奈子 中村 祥英後藤 貴樹三宅 章公登坂 直規井上 知美小竹 武野々木 宏
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2014 年 4 巻 p. 20-25

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抄録

 院内急変例,特に心停止の救命率を改善するには,第1発見者の心肺蘇生法(CPR)の質の改善とチーム医療が重要である。当院では,3年前から職種別に適切なトレーニングが可能となるよう様々なトレーニングコースを開催している。医師・看護師向けに,AHA-BLS/ACLSコース,日本救急医学会認定ICLSコース,日本内科学会認定JMECC,更に医師・看護師以外の全職員へは胸骨圧迫のみのCPRとAEDの簡易講習を実施した。それとともに,院内心停止の実態とDNAR(蘇生不要指示)の状況について登録システムの構築をはかり,急変対応システム(Rapid Response System)設立への準備を開始した。
 全職員へのCPRコースは,ミニアンを1人1体ずつ使用し,1コース100名までの講習を7回実施した。計564名が参加し,前後でアンケート調査を実施した。5段階で意識調査を実施し,「目の前で倒れた方へのCPR」で実施する意欲の高い4-5点の割合は30%から受講後には75%へ上昇した。また「AEDの使用」については,同様に42%から77%へ上昇した。第1発見者によるCPRの実施率を上げるために,新規採用者全員への講習を引き続き実施する予定である。また,院内心停止実態調査の結果,夜間の対応に遅れがあるためハリーコールの全館放送を24時間実施することにした。死亡例調査でDNAR例は約8割であり,そのうち事前指示書類があるのは約半数であることから,院内心停止の取り組みを行う上でDNARの倫理的な確立が必要と考えられた。

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© 2014 日本災害医療教育研修協会
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