Journal of Clinical Simulation Research
Online ISSN : 2433-054X
4 巻
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報告会
原著
  • 小野 元, 吉野 茂, 中村 晴美, 長屋 文子, 福澤 知子, 森 佐和子, 田中 雄一郎
    2014 年 4 巻 p. 7-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    【はじめに】 提供数増加のために臓器移植法は改正され本人の拒否がなければ家族の希望で提供が可能となり,家族希望症例は増加している。しかしながら提供症例の多い救急医療現場の医師を含めた医療スタッフは多忙であり,臓器提供への取組みは困難なことが多い。そのため今回救急現場における臓器提供シミュレーションを行い,脳死診断を含め臓器提供に対する理解度を検討した。
    【方法】 脳死診断を受けた2例の脳死下臓器提供シミュレーションを1年間の期間を設けて施行した。最初の1例目のシナリオは内因性疾患による脳死患者であり,1年後の2例目は外因性疾患による脳死患者を設定した。そして参加者にはシミュレーション参加後にアンケート調査(理解度と自由意見)を行い,シミュレーションの効果を調査した。
    【結果】 最初のシミュレーションでは臓器提供への意義や脳死診断そして全体の流れすら理解を欠いていた。しかし2例目では家族ケアやドナー管理を含め,患者の代弁をした家族希望を医療機関全体でどのように扱うべきかについての検討も行われ,より家族ケアと医療機関としての管理が臓器提供プロセスの重要なポイントであることが理解された。
    【議論と結論】 これまで,我が国においては救急医療現場における終末期医療や家族ケア,ましてや臓器提供などは医学教育で学ぶことはほとんどできなかった。しかし今後はリビングウィルや家族ケアなどにも積極的に取り組む必要がある。従って,臓器提供に対するシミュレーション教育や訓練は医療の質を高めることやスタッフ教育のために重要な役割を果たすと考えられた。
  • 本多 満, 横田 京介, 一林 亮, 吉原 克則, 伊藤 博, 山田 亨, 岸 太一
    2014 年 4 巻 p. 14-19
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
     一般市民が自動除細動器(AED)を蘇生の際に使用出来るようになった現在,医学部の学生により正確な一次救命処置の実施が求められている。我々の大学では,以前より心肺蘇生教育の重要性を認識しており,医学部5年生において一次救命処置のシナリオを用いた客観的臨床実技試験(OSCE)を行ってきた。今回我々は,パーソナルコンピュータを用いた客観的評価と教員がチェックリストを用いた評価を比較検討した。
     33名の医学部5年生を対象とした。教員が,学生が行う人工呼吸と胸骨圧迫のスキルを,チェックリストを用いて評価する際に同時にシミュレーターに接続したパソコンにより評価した。OSCE後にこの二つの評価を比較検討した。結果としては,チェックリストを用いて評価者が評価をする評価に対してパーソナルコンピュータによる評価は正確性において劣った。特に胸骨圧迫に関する質の評価において大きな差が出た。
     パーソナルコンピュータによる客観的評価は,一次救命処置の人工呼吸と胸骨圧迫の質の評価において有用であり,この評価法を教育コースの中においても活用していく必要があると考えられる。
  • 下山 佳奈子, 中村 祥英, 後藤 貴樹, 三宅 章公, 登坂 直規, 井上 知美, 小竹 武, 野々木 宏
    2014 年 4 巻 p. 20-25
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
     院内急変例,特に心停止の救命率を改善するには,第1発見者の心肺蘇生法(CPR)の質の改善とチーム医療が重要である。当院では,3年前から職種別に適切なトレーニングが可能となるよう様々なトレーニングコースを開催している。医師・看護師向けに,AHA-BLS/ACLSコース,日本救急医学会認定ICLSコース,日本内科学会認定JMECC,更に医師・看護師以外の全職員へは胸骨圧迫のみのCPRとAEDの簡易講習を実施した。それとともに,院内心停止の実態とDNAR(蘇生不要指示)の状況について登録システムの構築をはかり,急変対応システム(Rapid Response System)設立への準備を開始した。
     全職員へのCPRコースは,ミニアンを1人1体ずつ使用し,1コース100名までの講習を7回実施した。計564名が参加し,前後でアンケート調査を実施した。5段階で意識調査を実施し,「目の前で倒れた方へのCPR」で実施する意欲の高い4-5点の割合は30%から受講後には75%へ上昇した。また「AEDの使用」については,同様に42%から77%へ上昇した。第1発見者によるCPRの実施率を上げるために,新規採用者全員への講習を引き続き実施する予定である。また,院内心停止実態調査の結果,夜間の対応に遅れがあるためハリーコールの全館放送を24時間実施することにした。死亡例調査でDNAR例は約8割であり,そのうち事前指示書類があるのは約半数であることから,院内心停止の取り組みを行う上でDNARの倫理的な確立が必要と考えられた。
  • 井上 知美, 石渡 俊二, 野々木 宏, 小竹 武
    2014 年 4 巻 p. 26-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】本研究ではBLS講義,実習による教育効果を評価するため,講義および実習後の救助意欲,救命知識の変化および受講経験や性別など教育効果に影響を及ぼす因子について解析した。
    【方法】近畿大学薬学部4年次生156名を対象にCPRの実施およびAEDの使用の救助意欲を講義前後,実習後に5段階回答形式のアンケートで比較した。また,胸骨圧迫のテンポ,手の位置およびAEDの使用適応患者条件における選択問題について,講義前後,実習後の正答率の比較により救命知識の変化を解析した。
    【結果】CPRの実施,AEDの使用の救助意欲は,講義,実習後,有意に向上した(p<0.001)。講義前の救助意欲は,性別間,過去の受講経験の有無において有意差は認められなかったが,過去の受講経験がない学生において,実習前後でのAEDを使用する救助意欲の改善度に有意差が認められた(p<0.05)。救命知識の正答率について,胸骨圧迫のテンポは,講義,実習後により有意に向上し(p<0.001),胸骨圧迫の手の位置は実習後,有意に向上した(p<0.001)。AEDの使用適応患者条件については講義実施後,有意な向上は認められなかったが,実習実施により有意に向上した(p<0.001)。
    【考察】今回のBLS講義,実習はCPRの実施およびAEDの使用の救助意欲および救命知識の向上に有効であり,薬学生に対して教育効果が示された。
  • 永山 正雄, 吉田 穂波, 横山 直司, 岡田 香住, 梁 成勲
    2014 年 4 巻 p. 34-44
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    【背景】医療は医療従事者のみで成り立つものではなく,医療受給者とその家族,社会システムのすべてが密接に関わっている。医療従事者がチームとして協働するために,さまざまなチームのモデルが呈示されている。
    【対象と方法】われわれの施設は,わが国に導入された医療安全管理チームトレーニングである日本内科学会専門医部会患者安全TeamSTEPPSワークショップに他施設に先駆けて取組んだ。本報告ではワークショップ開催前後に参加者に施行したアンケート調査結果の解析から,TeamSTEPPS受講が職員のチーム医療の認識に及ぼす効果と課題を検討した。
    【結果】ワークショップ参加者と見学者の患者安全,TeamSTEPPSに対する関心,理解と共感は,ワークショップの進行に連れて和やかな中に深まり,TeamSTEPPSは多科多職種職員のチーム医療の意識と認識を急速に向上させることを示した。
    【考察】TeamSTEPPSと同様のアプローチは,多科多職種による救急・集中治療シミュレーション教育に応用出来る可能性があること,過ちをおかした後の対応に関する観点をTeamSTEPPSに加える必要があることを強調した。
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2013年会議抄録
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