抄録
本研究では、人が自動車交通場面に対し、どのような対象や事象を危険として感じるのか、リスク・パーセプションを形成する要因の探索的検証を目的とした。97名(社会人男性67名、社会人女性30名)の対象者に、潜在的な危険を含む5種類の異なる交通場面を提示し、危険を感じる対象、箇所を場面想定法で判定させた。印象評価の結果、5場面で54項目が得られた。項目毎に97名の反応を二値(1:危険を感じる/0:危険を感じない)で割り当て、危険を感じる反応者率の低い項目を除外した。項目間の類似性を把握するため、97名40項目の質的データを数量化し数量化理論第Ⅲ類で分析し、第4軸までを抽出した。第4軸までのカテゴリースコアに基づいて階層的クラスター分析により、項目間の距離から5つのカテゴリーに分類した。危険の印象は、(1)刺激の特徴による危険感、(2)相対的な距離による危険感、(3)状況による危険判断、(4)自車の行動による危険の推定、(5)他者の出現による危険の推定、から評価されることが示唆された。これらの結果より、リスク・パーセプションの形成は、直感的処理と分析的処理の要因に大別されることが示唆された。