日本交通科学学会誌
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交通事故関連法医解剖におけるアルコールと薬物の検出
熊本県における1999年〜2008年の状況
米満 孝聖大島 徹西谷 陽子
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2012 年 12 巻 1 号 p. 3-12

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抄録
熊本大学で実施した交通事故関連法医解剖179例(1999〜2008年)におけるアルコールと薬物の検出状況を調査した。血中アルコール濃度と尿中薬物スクリーニング検査は解剖時に、それぞれガスクロマトグラフィーと市販の簡易検査キット(TriageDOA)を用いて実施した。尿中薬物スクリーニング検査結果が陽性の事例については、冷凍保存してあった血清を用いて、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)で確認分析した。アルコール検査が実施できた149例のうち47例からアルコールが検出され、陽性率は32%であった。アルコール陽性率は自過失事故、自転車乗車中および歩行中で高かった。2002年から実施した尿中簡易薬物スクリーニング検査は、90例中8例が陽性であり陽性率は9%であった。陽性薬物の種類はベンゾジアゼピン類6例、バルビツール酸類3例、モルヒネ系麻薬1例であった。血清を試料としたGC-MS分析では、尿中簡易検査キットで検出された薬物類とともに、簡易検査キットでは検出できないフェノチアジン系薬物やその他いくつかの中枢神経作用薬が検出された。今回の事例で検出された薬物と交通事故発生との因果関係を確定することは不可能であるが、交通事故における薬物検査は事故状況を再現するための有用な情報となる。TriageDOAが陽性であった8事例の概要を示し、事故原因との関連について考察した。今回の研究では十分に実施できなかったが、交通事故におけるアルコール以外の薬物の影響を検討するためには薬物の定量分析を含めた詳細な事例データの蓄積が必要である。
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© 2012 一般社団法人 日本交通科学学会
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