日本交通科学学会誌
Online ISSN : 2433-4545
Print ISSN : 2188-3874
外傷後のリハビリテーション(身体的および高次脳機能)の発達
渡邉 修
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 14 巻 2 号 p. 3-8

詳細
抄録

脳外傷の年齢層は20歳と50歳に2相性のピークを有し、前者では交通事故が、後者では転落・転倒事故が主な原因である。近年の救急医療の発展および交通事故対策の結果、交通事故の死亡者数は年々減少しているが、生存する例は増え、重症例はむしろ増加していることから、リハビリテーションの果たす役割は大きい。一般に脳外傷は、受傷機転より、前頭葉および側頭葉に損傷をきたしやすい。したがって、障害像は、身体障害としては、失調症状は多いが運動麻痺は少なく、重症例でもADLは自立する例が多い。しかし、高次脳機能障害としては、前頭葉損傷として注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害(自発性の低下、易怒性、病識の低下等)が、側頭葉損傷として記憶障害がみられやすい。リハビリテーションは、環境調整、要素特異的訓練、代償的訓練、行動変容療法、全人的、包括的リハビリテーション、地域リハビリテーション、職業リハビリテーションからなる。重度の高次脳機能障害例は、病院内の回復期までのリハビリテーションでは改善せず、地域の社会資源を活用した、医療・福祉・行政の連携体制が必要となる。自験例より、認知リハビリテーションによって、脳血流が改善することを報告した。脳外傷後の認知障害および社会的行動障害は、重度例であっても、時間をかけた、なだらかな回復を示し、受傷後、数年以上にわたって回復をみることから、長期的なリハビリテーションと支援体制の構築が必要である。

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本交通科学学会
次の記事
feedback
Top