日本交通科学学会誌
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軽自動車の側面衝突事故におけるFar-side乗員の傷害発生メカニズムの検討
櫻井 俊彰河内 茂紀槇 徹雄一杉 正仁
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2015 年 14 巻 3 号 p. 15-25

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抄録

車両相互事故全体における側面衝突事故(出合頭衝突含む)の被害者の割合は約30%を占める。一般に普通自動車の場合、車室内内装が侵入するため、衝突側に近い側の乗員(Near-side乗員)の方が衝突側から遠い乗員(Far-side乗員)に比べて重症度が高い傾向を示す。このため、一般に行われる衝突試験ではNear-side乗員1名乗車時の評価を行っている。しかし、軽自動車の側面衝突事故において、Near-side乗員とFar-side乗員の両方が乗車している条件ではFar-side乗員の方が高い頭部傷害値を示す報告がある。本研究では、乗員2名における軽自動車の側面衝突に関してCAE解析(MADYMO)を用いて再現する。また、普通自動車と軽自動車の大きな相違点である車体質量と車内空間の広さによる乗員傷害への影響を検討することにより、軽自動車におけるFar-side乗員の傷害発生メカニズムを明らかにすることを目的とする。軽自動車に2名乗車時、Far-side乗員の頭部とNear-side乗員の肩部とが衝突することによりFar-side乗員の頭部に傷害が発生する。また、Far-side乗員とNear-side乗員の胸部が衝突することによりFar-side乗員に胸部傷害が発生する。Near-side乗員とFar-side乗員の頭部傷害を比較すると、Far-side乗員の傷害値が高くなる。次に、乗員間距離を離した場合、Far-side乗員の頭部とNear-side乗員の肩部の距離が離れるため、Far-side乗員の頭部衝突位置が頭頂部に近づき頭部の傷害値が大きく上昇する。同様にFar-side乗員の倒れこむ距離が増すため胸部の傷害値も上昇する。また、車体質量を増加させた場合、衝突時の非衝突車両の加速度が減少するため乗員加速度も低下するため、頭部の傷害値および胸部の傷害値いずれもが低下する。

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© 2015 一般社団法人 日本交通科学学会
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