日本交通科学学会誌
Online ISSN : 2433-4545
Print ISSN : 2188-3874
新しいスケール:Emergency Coma Scaleの開発の経緯と有用性の検討について
髙橋 千晶奥寺 敬
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 16 巻 1 号 p. 3-8

詳細
抄録

目的:交通事故の傷病者の救護を含めた日本の救急医療の現場では、迅速に患者の状態を伝達する方法の一つとしてコーマスケールが使用されてきた。Japan Coma Scale(JCS)が国内で最も普及されているが、評価者間のばらつきなどの問題が指摘されており、新たなコーマスケールの開発が望まれていた。2003年に、これらの問題点を改善したEmergency Coma Scale(ECS)が開発され、普及されつつあるが、そのスケールがJCSの問題点を解決できているのか、多施設合同比較研究を行い検証を行った。方法:研究では評価者間のスコアの一致性(STEP I)と、評価スコアの正確性(STEP Ⅱ)の2つの側面から検証を行った。STEP Iでは救急外来での実際の患者の意識レベルの評価を3つのコーマスケール〔ECS、JCS、Glasgow Coma Scale(GCS)〕を用いて複数の評価者で行いそのスコアの一致率を解析した。STEP Ⅱでは意識障害のある模擬患者の動画を視聴して、参加者が3つのコーマスケールを用いて評価し、その正解率を検証した。結果:STEP Iでは評価者全体でECSにおいて評価者間一致率が高かった。STEP ⅡではECSにおいて正解率が最も高い結果を示したが、コーマスケールの使用経験のない医学部4年生で評価法の複雑なGCSで正解率が著明に低かった。考察:両研究の結果を総合すると、ECSはさまざまな職種の医療スタッフだけでなく一般人にも簡潔で、解釈しやすいスケールであり、救急診療の現場によく適合し、非常に有用な評価手段であると考える。

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本交通科学学会
次の記事
feedback
Top