日本交通科学学会誌
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日本外傷データバンク(JTDB)データ2012を用いた救急搬送中の急変例の検討
門馬 秀介樋口 遼福田 賢一郎三宅 康史有賀 徹
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2017 年 16 巻 1 号 p. 9-17

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抄録

日本外傷診療機構(JTCR)によって症例の集積と年次報告がなされている外傷登録制度(日本外傷データバンクJTDB)を利用し、2007年から2011年までの5年間に全国の登録された救命救急センターに搬送され治療を受けた交通外傷症例30,518例のうち、現場RTS(Revised Trauma Score)が正常でISS(Injury Severity Score)による最終的な解剖学的損傷が軽症にもかかわらず、病院到着時にはその悪化を認めた症例の分析を行った。現場RTSが正常で、ISS≦15の症例が6,685例あり、来院時RTSの悪化のない症例が6,427例(96.1%)、1点の低下が218例で、悪化していない症例を合わせると99.4%であった。2点の低下が30例、3点が9例、4点が1例で、それ以上の低下例はなかった。内訳は、大脳損傷19、頭蓋底骨折5、開放性円蓋部骨折1で、直達外力によらない脳損傷の可能性を受傷機転から推測する必要がある。また四肢・骨盤では、大腿骨骨折5、開放性脛骨骨折3、開放性骨盤骨折1、膝窩静脈完全離断1などがあり、病院までにおける応急処置では、止血処置や骨折部の安定化による出血の制御が特に重要である。この結果は、4年前の検討とほぼ同じであり、登録症例数・症例登録施設の増加、JTDBデータの登録技術の向上、道交法の改正と無関係に、第3の搬送基準である受傷機転の項目が、結果的に軽症外傷症例の三次施設搬送例を増やす結果につながっており、受傷機転による搬送基準の改正、初療後の二次医療機関への早期転送の確立などが重要である。

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© 2017 一般社団法人 日本交通科学学会
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