日本交通科学学会誌
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疲労き裂先端の応力解析と圧電アクチュエータを用いた破壊制御実験
宮川 睦巳吉田 和将志村 穣中村 一史
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2017 年 17 巻 1 号 p. 19-31

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抄録
近年では、電気―力学変換デバイスとして有用な圧電材料を機械・構造物の表面に貼付し、振動制御、破壊制御、およびひずみモニタリングに用いる試みが行われている。本研究では、き裂先端近傍もしくはき裂直線上に圧電素子を設置することで応力集中部の応力を緩和し、繰り返し荷重による疲労き裂成長の抑制ができると考える。疲労き裂を楕円に近似することで二次元弾性論の理論解を適用させ、き裂先端近傍の応力状態を線形破壊力学で解析する。さらに、圧電素子の中でも高い発生力と優れた応答性を持つ積層型圧電アクチュエータを用いて応力集中部の応力緩和を行い、き裂成長の抑制と余寿命サイクルの予測を目的とした破壊制御実験を行う。き裂の成長サイクル予測については、疲労試験において疲労き裂の成長にかかるエネルギ解放量が一定であると仮定し、J積分によるエネルギ値の変化からき裂の成長サイクルを求める。この手法は二次元弾性論における面内に一様引張の無限遠荷重が作用する問題と、圧電アクチュエータの効果を集中荷重が作用する問題に近似し重ね合わせの原理を用いている。繰り返し荷重下におけるき裂先端近傍の応力緩和実験の結果として、疲労き裂の成長量が安定破壊状態である場合において、き裂成長の予測および応力緩和の効果が確認でき、およそ160[%]の延命効果を確認した。実際には面内のみならず面外方向など様々な荷重が作用しているため、圧電アクチュエータの貼付位置や方向、印加電圧を工夫することで、圧電アクチュエータの利用の適用範囲が広がると考えられる。
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© 2017 一般社団法人 日本交通科学学会
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