抄録
近年、高齢化率の増加に伴い、運転免許証を保有する高齢者が増加しており、今後もこの傾向は続くことが予想されている。このことから、高齢ドライバーによるペダル踏み間違いが原因となる事故が増加する可能性が懸念される。自動運転技術や先進安全技術の発展は、事故の減少に大きく貢献する可能性があるが、サポート機能の備わった車両が普及するまでにはそれなりの年月を要するため、普及と並行して事故防止対策を考えていくことが重要な課題となっている。本研究では、高齢ドライバーのペダルワークに着目し、とくに急ブレーキ時のペダルワークを計測・解析し、事故要因を明らかにすることを目的とした。そのために、バーチャルリアリティ(VR)技術、モーションキャプチャ技術およびhead mounted displayを組み合わせてドライビングシミュレータを開発した。さらに、前方に急に飛び出した歩行者に気づいて事故を回避する際の若年ドライバーおよび高齢ドライバーの行動を計測・解析することで、高齢ドライバーの特徴を明らかにした。ドライバーのブレーキ時のペダルワークには「アクセルから足を離す」「ブレーキへ足を移す」および「ブレーキを踏み込む」の3つのプロセスがある。本論文では、「歩行者が車道に飛び出してからドライバーがアクセルから足を離すまでに要した時間」「ドライバーがアクセルからブレーキに足を移すのに要した時間」および「歩行者が車道に飛び出してからの10秒間のドライバーの右足の総移動軌跡長」について調査した。その結果、操舵よりもブレーキによる回避を選択する割合が、若年者の43%に比べ、高齢者は60%と高い傾向にあることがわかった。さらに、高齢者は急ブレーキ時のペダルワークが遅く、ブレーキの踏み込みも安定しないことが明らかになった。以上から、車両速度に適したペダルワークができていないことが事故要因の一部であると結論する。