宗教研究
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論文〔特集:宗教と経済〕
教団会計と意識調査にみる人口減少時代の維持困難さ
経済的側面を中心に
川又 俊則
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2017 年 91 巻 2 号 p. 99-124

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抄録

仏教各派が毎年公開している事業計画・報告や予算・決算などの教団会計は、その宗派の現状を示す貴重なデータである。各教団が二十世紀後半から実施してきた意識調査も経済状況を理解できる。小稿はこれまで研究論文ではあまり顧みられなかったこれらのデータを用い、現代日本の仏教およびキリスト教について、主に経済側面を論じた。その際、筆者自らの二十年にわたる現地調査を分析枠組みにおいた。個別寺院の賦課金などで教団運営を行ってきた仏教各派は維持困難への対策を立てるも、低成長・人口減少がさらに進むことを見据えた抜本的改革に至っていない。キリスト教界では、独自の年金制度維持すら困難である。個々の宗教者の生活を守り、各寺院・教会の維持だけでなく、教団全体の維持を考えるならば、学校法人や他組織でも実施している組織縮小をも視野に入れた抜本的改革も必要だろう。

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