日本交通科学学会誌
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自動車内における一酸化炭素中毒死剖検例
自験例と本邦報告例の検討
川井 北斗中川 里沙子高相 真鈴中西 智之高 淳澔一杉 正仁
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2019 年 19 巻 1 号 p. 27-32

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抄録

自動車の衝突事故以外の死亡例として、一酸化炭素(CO)中毒、熱中症、溺水などが報告されている。しかし、これらに対しては具体的な分析に乏しく、効果的な予防策が構築されていない。今回、自動車内で不慮のCO中毒により死亡した剖検2事例、およびわが国における同様事例を調査し、予防策について検討した。剖検例は、1例が雪による排気管の閉塞、もう1例は自動車衝突後の排気管破損放置が原因でCO中毒死を遂げていた。一方、わが国の報告例は、自動車内における不慮のCO中毒者は39人であり、うち14人は死亡していた。発生原因については、死亡例は本剖検例のような車両の整備不良が42.9%、雪による排気管の閉塞が21.4%であり、生存例は雪による排気管の閉塞が92.0%であり、車両の整備不良が8.0%であった。CO中毒予防策について、まず、死亡例においては、車両の整備不良による一酸化炭素中毒になる危険性について広く啓発するとともに、排気管の損傷等を確認すべく、点検・整備を受ける必要がある。次に、生存例においては発生原因の92.0%が雪による排気管の閉塞であり、約半数は乳幼児が犠牲になっているという特徴があった。対策として、積雪時には必ず排気管のテールパイプ周囲の雪を除雪してエンジンをかける必要がある。また、自動車に関するCO中毒事例の登録制度の構築によって、全事例の詳細な分析が望まれる。さらに、自動車内のCO濃度を測定して警報を発するシステムの導入といった車両の安全対策も望まれる。

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© 2019 一般社団法人 日本交通科学学会
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