日本交通科学学会誌
Online ISSN : 2433-4545
Print ISSN : 2188-3874
超高齢日本における高齢者への運転免許自主返納に関する意思決定支援に効果的に関与した相談スキル
三好 陽子吉岡 伸一山本 美輪
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 21 巻 2 号 p. 45-55

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抄録

わが国は、高齢化に伴い高齢運転者の死亡事故件数が全体に占める割合が増加している。警察庁は、安全運転相談員(以下、相談員と略)を配置した相談窓口の利用を推奨しているものの、その利用実態、相談員の人口学的情報や実践内容は把握されていない。75歳以上の運転者には、免許更新時に認知機能検査が義務付けられているが、認知症高齢運転者の重大な死亡事故事例が少なからず報告されている。そこで本研究では、わが国の相談員の現況を調査し、高齢運転者の意思決定を支援するプロセスにおいて効果的に関与した相談スキルを明らかにすることを目的とした。研究デザインは探索的質的研究法を用い、全国の安全運転相談窓口で従事する相談員に対し、郵送による質問紙調査を行った。高齢運転者の意思決定支援プロセスに効果的に関与していた場面の記述内容について、KH Coder (Ver.3)によるtext miningを行った。132人から有効回答を得た。相談員は、警察官71人、警察職員34人、看護師28人などであった。自由記述から、447文、10,192語句を抽出した。頻出語は、「当事者」257件、「自主返納」162件、「家族」155件などであった。共起ネットワークによって抽出された8つのサブグラフを生成する語句については、Krippendorffの内容分析技法であるkeyword in contextコンコーダンスを用いて文脈を確認し命名した。意思決定支援に効果的に関与した相談スキルとして、【当事者の意思を尊重する】【当事者・家族の話を傾聴し共感する】【当事者の立場で思考する】【判断材料として客観的データを提示する】【MCI・認知症者にメリットを提示し自主返納を説得する】【運転事故事例を提示し理解を得る】【当事者の不安を理解し納得を得る】【地域包括支援センターと連携・協働する】とそれぞれの相談スキルの関連要素が明らかとなった。

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© 2022 一般社団法人 日本交通科学学会
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