日本交通科学学会誌
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長野県で発生した自動二輪車単独事故の分析
石川 莉那杉山 由季國行 浩史
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2023 年 23 巻 1 号 p. 42-52

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抄録
中山間地域が多くを占める長野県の交通事故では自動二輪車事故の低減が停滞していることが懸念されている。さらなる交通事故の低減には、地方特有の真の交通事故要因を的確にとらえ、細やかに対策を講じていくことが求められる。そこで本研究では、長野県において発生している中山間道路における自動二輪車単独事故に注目し、道路線形が起因する事故要因について事故統計データ分析および事故事例の分析を行った。2015 ~ 2019 年の5 年間に長野県で発生した自動二輪車単独の死亡重傷事故の統計データ65 件を分析した結果、一般道の事故が54 件(約83%)を占め、45 ~ 64 歳層ライダーによる事故が28 件(約43%)と多くを占めていた。これら自動二輪車単独事故の多くは、中高年層ライダーが観光・ドライブを目的として長野県外から来県し、カーブ区間で速度超過や前方不注意で起こしていることがわかった。また、特徴から得られた中高年層ライダーの観光・ドライブを目的とした事故事例12 件に対して国土地理院地図を用いた事故地点の道路線形の分析から、事故手前区間は- 4.5 ~- 1.5%の下り勾配や50 m 以上の直線区間があり、R120 m 以上のやや緩やかなカーブで多く発生していることがわかった。また、カーブ手前区間には縦断勾配の変化や橋の継ぎ目などの道路線形の急な変化となる特徴もみられた。これらの事故分析結果から、道路線形の特性や急な変化によって速度の超過やカーブを適切に曲がれていないことが事故要因としてあげられ、事故防止には道路線形に対する適切な減速行動を促すことが求められることがわかった。
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© 2023 一般社団法人 日本交通科学学会
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