認知症ケア研究誌
Online ISSN : 2433-4995
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小規模多機能型居宅介護における介護リーダーの情緒的消耗感とワークエンゲイジメントへの影響要因
畦地 良平 北村 世都内藤 佳津雄
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2020 年 4 巻 p. 19-28

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抄録

【目的】小規模多機能型居宅介護で働く介護リーダーの情緒的消耗感とワークエンゲイジメントに対し、リーダー自身の気質、心理的風土やストレッサーが与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】小規模多機能型居宅介護事業所に在籍する介護リーダーとサブ・リーダー9,000名のうち、有効回答が得られた1,906名を解析対象とした。分析は情緒的消耗感、ワークエンゲイジメントをそれぞれ目的変数とし、気質として罰や報酬への反応性(行動抑制系、行動賦活系)、心理的風土として業績規範、支持的風土、事なかれ主義、敵対的集団主義、職場ストレッサーとして質的負荷、量的負荷、部下に対する責任を説明変数として、階層的重回帰分析を行った。【結果】情緒的消耗感の分散説明率の増分については、心理的風土が大きく、気質と職場ストレッサーは同程度であった。情緒的消耗感の有意な影響要因は、行動抑制系とネガティブな心理的風土、量的・質的負荷であった。ワークエンゲイジメントの分散説明率の増分については、気質よりも心理的風土と職場ストレッサーが大きかった。ワークエンゲイジメントへの有意な影響要因は、行動賦活系とポジティブな心理的風土、量的・質的負荷の低さであった。なお、質的負荷の低さは他の変数よりも強く影響を与えていた。【結論】介護リーダーの罰と報酬への反応性は情緒的消耗感やワークエンゲイジメントへの影響要因である。しかし、リーダー自身が知覚する心理的風土やストレッサーがより大きな影響を持っていた。リーダー個人に合わせた仕事量調整や役割明確化が情緒的消耗を軽減し、ワークエンゲイジメントを促進するものと考えられる。認知症ケアに重点がある小規模多機能型居宅介護においては、利用者のケアへのネガティブな影響を防ぐ意味合いからも、介護リーダーが知覚する組織・環境的側面の改善が重要である。

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