2020 年 36 巻 1 号 p. 3-12
抄録 近年, 高齢化の進行に伴い, 在宅や介護保険施設などでの歯科医療サービスを提供する機会が増えている. 歯科衛生士は, 国民に安心安全な歯科医療サービスを提供するため, 医科歯科連携のみならず, 看護師, 栄養士など高齢者を取り巻くさまざまな職種と連携することが必要となってきた. そのため, 歯科医療系の大学ではこのような多職種連携に関する教育を行い, 高齢者のQOLを志向する人材を育成することが喫緊の課題である.
九州歯科大学では, 西南女学院大学看護学科, 栄養学科, 福祉学科, 西日本工業大学デザイン学部の学生を対象として, 高齢者のQOL向上のために異なる専門分野の学生が互いに学習し合い, 将来, 専門職種として現場に出た際, 多職種連携のニーズに対応することができる人材を育成することを目的とした 「高齢者支援学Ⅰ」 を平成29年度から実施している. 本研究では, 当該講座において全受講生に対する受講前後のテストならびに九州歯科大学の受講生を対象とした受講後アンケート調査を行い, 当該講座の教育的効果について検討した.
平成29年度, 30年度のいずれにおいても, ポストテストの得点がプレテストの得点より有意に高かった. また, 受講後アンケート調査では, 多職種連携の知識の習得とほかの職種への理解に正の相関がみられた. 以上より, 本講座は多職種連携に関する教育的効果があったことが示唆された.