日本歯科医学教育学会雑誌
Online ISSN : 2433-1651
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アクティブ・ラーニング型授業による歯周治療計画立案が歯科臨床実習生にもたらす教育的意義
石黒 一美村樫 悦子沼部 幸博
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2021 年 37 巻 2 号 p. 37-45

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抄録

抄録 歯周病は患者の背景や希望を考慮し, 咬合機能や審美性を維持しながら治療する必要があるが, 学生にとって講義のみで理解するのは困難である. そこで, 一口腔単位での歯周治療の重要性を認識させ, 臨床実習のモチベーションを向上させるため, 臨床実習開始2カ月の歯科臨床実習生に対し協同学習を取り入れたアクティブ・ラーニング型授業を行ったので, その教育的意義を検討する.

 授業に出席した109名の歯科学生を5~6名のグループに分け, 中等度から重度の慢性歯周炎患者の初診時の情報, 口腔内写真, エックス線画像, 歯周組織検査の結果を配布し, 治療計画を協同で立案するよう指示した. その後, グループごとに教員と学生との質疑応答形式での発表を行い, 授業後にアンケートを行った.

 学生は治療計画の立案が難しいと感じていたが, グループ作業には積極的に参加し, 作業や発表はスムーズだった. また, 90%以上の学生は本授業が臨床実習や将来の臨床に役立つと答えた. 一方, 歯科医師国家試験に役立つと答えた学生は85%であった.

 歯周治療計画の立案を行うアクティブ・ラーニング型授業は, 一方向型の講義や多肢選択問題に対応した学習では習得できない, 一口腔単位での包括的な歯周治療の重要性に対する学生の認識を深めたと考えられる. また本授業は, 歯科医師国家試験, 卒前の臨床実習, 卒後の臨床の多岐にわたり有意義なカリキュラムであることが示唆された.

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