2021 年 37 巻 2 号 p. 46-55
抄録 歯学教育モデル・コア・カリキュラムにおいて, 歯科医師として求められる基本的な資質・能力にプロフェッショナリズムが挙げられるが, その教育方略や評価等についての学術的なコンセンサスは得られておらず, その実践は試行錯誤がなされている.
本研究の目的は, コミュニケーション概論実習において, 学生が, アンプロフェッショナルな行動に対する処分を考えることにより, 何を学習したかを明らかにすることである. 実習では, Brockbankらの報告にあるシナリオに対し, 学生各人が処分レベルを回答後, プロフェッショナリズムについての講義, グループディスカッションを行った. 実習後に選択式および自由記載回答によるアンケート調査を行い, 計量テキスト分析を通して内容分析を行った.
自由記載における共起ネットワークからは, 〈自身の行動への責任〉〈社会の目〉〈学生生活〉〈一般人の厳しい評価〉〈歯科医師になることへの意識〉〈プロフェッショナルな態度〉のサブグラフが抽出された.
本研究結果から, 本実習は学生がプロフェッショナリズムを考えるきっかけとなり, 学生が医療人として, 自身の行動に責任をもつことの必要性などを考え, 将来に向けての前向きな姿勢が示されたと思われる. 今後はプロフェッショナリズム教育において, 「~しない」 ということだけではなく, プロフェッショナル・アイデンティティ形成に結び付けることを検討する必要がある.