抄録 岩手医科大学歯学部では, 2011年よりハーバード大学と教育改革プロジェクトを開始し, 改革の一環として学生歯科診療室を新設した. 今回, 学生歯科診療室の7年間の患者動向分析を行ったので報告する.
対象は, 2012年5月から2019年3月までの間に学生歯科診療室に通院した患者484名とした. 患者の治療内容をハーバード大学の症例分類を参照に6タイプに分類し, 初診時の患者年齢, 治療の進行状況, 治療期間, 中断理由について調査を行った.
その結果, 下記のことが明らかになった.
1. 患者の年齢層は, 60~70歳台が約半分を占めた.
2. 症例ケースは, 補綴治療を含むタイプⅢ, Ⅴが多かった.
3. タイプⅣは治療期間が約35カ月とかなり長期間となっており, 症例の難易度に差があることが明らかになった.
本調査から学生歯科診療室の新設により, 診療参加型臨床実習の充実が図られたと考える. しかし, 学生に適切な症例を選択するための基準の構築や, 患者確保などの問題も抽出され, さらなる改革が必要と思われた.