2022 年 38 巻 3 号 p. 148-157
抄録 近年,口腔インプラント治療(以下,インプラント治療)は広く普及し,知識と技術の習得が卒前教育でも求められ,本学も講義とインプラント埋入実習(以下,実習)により理解を図っている.今回,実習前後の学生アンケート調査から,本実習がインプラント治療の理解に与える学習効果を検証した.
2020年度82名の本学4年次学生に対し,実習前後にインプラント治療への「興味」「理解」「埋入の難易度」「安全性」「将来的希望」および「実習の理解」に関する6段階評価と自由記載のアンケートを行った.なお,本実習では,顎模型の右下5,7相当部に,可視下にてフリーハンドで埋入した.実習前後のデータが揃った80名の評価を比較検討したところ,実習後に治療への「理解」と「実習の理解」が有意に増加した.また,「埋入の難易度」は有意に減少し,「安全性」は有意に増加し,実習によりインプラント治療は「難しくない」「安全」と考えた学生の増加が推察された.一方で,「興味」や「将来的希望」は高いスコアを維持し,学生のインプラント治療への潜在的な興味や将来的な希望の高さが推察され,自由記載の内容でも好意的な意見が多かった.
本学学生は,インプラント治療への興味や将来的な希望は高く,本実習はその理解を深めるのに有効であることが示唆された.一方で,臨床を想定したさらなる実習内容の充実が今後の課題として考えられた.