抄録
本研究の目的は,要観察歯を取り入れたう蝕診査項目の細分化ならびに歯科保健活動の場におけるう蝕活動性試験(カリオスタット^<[○!R]>)の導入が,幼児のう蝕罹患性を把握し,効果的な幼児の歯科保健管理を行うために有効かどうかを検討することである。箕面市予防歯科センターの長期管理登録システム下にあった80名の1歳時から5歳時までのう蝕罹患状況を調査した。その結果,1.5歳時のう蝕経験者率30.0%,dmf指数1.25と低かった。2.要観察者数ならびに一人平均要観察歯数の最大値は4歳時にあった。また,3歳時の要観察歯を有する者は,5歳時で72.7%がう蝕に罹患していた。3.3歳時のカリオスタット値が2歳時から上昇した群は,これ以外の変移した群に比較して,3歳のう蝕罹患者率が高くなった。また,5歳で高いう蝕罹患状況を示し,dmft指数が有意に高くなった。さらに5歳のう蝕罹患の予測性では,陽性適中率73.3%を示した。以上のことから,継続的な管理の下で,3歳時の要観察歯の有無および2歳時から3歳時へのカリオスタット値の変移状態から5歳時のう蝕罹患状態を予測できることが明らかになり,幼児期の歯科保健管理における重点対象者を選定できる可能性が示唆された。