口腔衛生学会雑誌
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原著
アクア酸化水の殺菌効果およびヒト歯肉由来細胞のDNA合成と細胞膜障害からみた安全性の評価
五石 義範佐藤 勉丹羽 源男
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1996 年 46 巻 2 号 p. 178-186

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抄録
近年,強酸性水(アクア酸化水)の歯科領域での有用性が議論されている。アクア酸化水を口腔内に応用するにあたっては口腔内組織に対する影響を十分に検討しなければならない。そこで本研究では成人歯肉由来の線維芽細胞とケラチノサイトを用いて,アクア酸化水の口腔内組織に与える影響を細胞レベルで検討した。アクア酸化水の殺菌効果と歯肉由来細胞のDNA合成および細胞膜障害に及ぼす影響を検討し,次の結論を得た。1)アクア酸化水原液のpHは2.5,残留塩素濃度は28mg/l,酸化還元電位はl150mVであった。pHは5倍希釈溶液(20%溶液)までは希釈とともに徐々に上昇した。残留塩素濃度は希釈倍数に比例して減少したが,酸化還元電位は緩やかに低下した。2)アクア酸化水原液はE. coliおよびS. mutansに対して完全な殺菌効果を示した。さらにこの効果は20%溶液でも認められた。3)アクア酸化水原液は歯肉由来細胞のDNA合成を著しく阻害し,細胞膜に障害を与えた。これらの細胞に対する影響は希釈とともに低減し,10%および20%溶液では水道水の場合と同程度であった。4)アクア酸化水の20%溶液を作用させた細胞は線維芽細胞,ケラチノサイトともに作用後,72時間の培養でほぼconfluentに近い状態まで増殖した。
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© 1996 一般社団法人 口腔衛生学会
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