口腔衛生学会雑誌
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原著
わが国におけるう蝕治療ニーズの推移と将来予測
安藤 雄一
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キーワード: う蝕治療, ニーズ, 将来予測
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1999 年 49 巻 1 号 p. 9-20

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抄録

今後の歯科医療のあり方についての基礎資料を得ることを目的に,わが国におけるう蝕治療のニーズ量について過去の推移を分析し,将来予測を行った。ニーズ量は,厚生省歯科疾患実態調査と人口データから推計した各年齢階級における未処置歯数に処置歯数の1/10を加えた値の総和とし,まず過去36年間の推移について分析した。次に,現在歯数の将来予測値を新たに算出し,人口と歯科医師数に関する既存の将来予測データを用いて,2029年におけるニーズ量の将来予測値を算出した。この際,現在歯数の増加について5段階,う蝕の有病状況については12段階の条件設定を行い,各条件による予測値の差異を検討した。分析の結果,ニーズ量は1975年をピークに減少傾向にあり,歯科医師一人あたりに換算したニーズ量は1993年では1957年の37%に減少していた。年齢階級別にニーズ量の推移をみると,若年者の減少傾向と高齢者の増加傾向が顕著であった。2029年におけるニーズ量の予測値は,う蝕有病状況と現在歯数の変化によって大きく影響されることが示された。過去の推移を考慮すると,今後,現在歯数が増加し未処置歯数が減少する可能性が高いと考えられることから,ニーズ量は減少する可能性が高いと考察した。また,年齢構成についてみると,高齢者の占める割合が現在よりも増加し,現在歯数の増加傾向が大きいほどその傾向が強まることが予測された。

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© 1999 一般社団法人 口腔衛生学会
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