2000 年 50 巻 1 号 p. 40-51
本研究は,1992年度の某銀行職員の歯科健診データを用いて,現在歯数および健全歯数のパーセンタイル曲線を作成し,本職域での口腔保健状態の評価にパーセンタイル曲線を用いる有用性について検討することを目的とし,以下の結論を得た。1.本調査の現在歯数の男性の50パーセンタイル値は,40歳で27歯,60歳で25歯であった。女性は40歳で27歯であった。2.本調査の健全歯数の男性の50パーセンタイル値は,40歳で15歯,60歳で13歯であった。女性は40歳で13歯であった。3.東京都の調査と比較すると,男女ともに本職域の現在歯数の75パーセンタイル曲線が,東京都の調査の50パーセンタイル曲線に相当していた。このことは,この職域における被検者が東京都の調査と比較して比較的良好な口腔内状態であることが示された。4.現在歯数のパーセンタイル曲線は55歳を過ぎると,あるいは現在歯数が20歯を下回ると急激に下降していた。その傾向は特に本調査の90および97パーセンタイル曲線に現れていた。5.被検者の自己評価と健診による客観的評価との関連性について調査した結果,自己評価が健診結果とほぼ一致したのは,現在歯数が43%で,健全歯数では13%であった。健全歯数のパーセンタイル曲線を保健指導に用いる際には専門家の助言が必要であることが示された。成人の現在歯数のパーセンタイル曲線による評価は集団特性の判定にも用いられるが,個人の歯の保有状況の位置付けを視覚的に確認できる利点を有していることが認められた。