口腔衛生学会雑誌
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原著
ラットにおけるフッ素とアルミニウムの生体への吸収とトランスフェリン結合型アルミニウムについて
楠本 雅子佐藤 誠田浦 勝彦四ッ柳 隆夫坂本 征三郎
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2000 年 50 巻 2 号 p. 236-246

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抄録

フッ素およびアルミニウムは食品,医薬品,また歯磨剤などに含まれ,ヒトが経口摂取することの多い元索である。この2つの元素は化学親和性が強く,相互作用を考慮した生体利用率の研究が必要である。フッ素とアルミニウムを,ラットに同時経口投与した場合と,各元素を単独投与した場合の血清中国元素濃度を経時的に観察・比較した。その結果,同時投与群において,血清中フッ素濃度はフッ素単独投与群より低くなり,血清中アルミニウム濃度はアルミニウム単独投与群より高くなった。次に,フッ素とアルミニウムの溶旅中での錯体構成比の理論値から7組の投与条件を設定し,投与30分後の血清中フッ素およびアルミニウム濃度を比較したところ,フッ素はアルミニウムの吸収を促進し,アルミニウムはフッ素の吸収を抑制している可能性が示唆された。また,投与溶液中のフッ化アルミニウム(AIF_3)錯体の存在比が高いときに,血清中アルミニウム濃度が有意に高くなることから,フッ素のアルミニウム吸収促進作用には,中性分子であるフッ化アルミニウム(AIF_3)錯体が関与していると考えられた。さらに,循環血液中のアルミニウムの主な存在形態であるトランスフェリン結合型アルミニウムを,抗体アフィニティカラムを利用し分別測定した結果,アルミニウムと同時にフッ素を投与した場合には,血清中のトランスフェリン結合型アルミニウムの割合が減少していることが示された。

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© 2000 一般社団法人 口腔衛生学会
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