口腔衛生学会雑誌
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原著
Actinomyces naeslundiiを用いた人工口腔装置における3.8%フッ化ジアミン銀の象牙質う蝕抑制効果
薄井 由枝今井 奨斎藤 典子花田 信弘植松 宏
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2005 年 55 巻 3 号 p. 186-193

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抄録

有歯顎高齢者が増加している今日にあって, 加齢や歯周病の進行などの原因により根面露出した歯は, 潜在的に根面カリエス罹患のリスクが高くなるといわれている.Actinomyces naeslundiiは, 根面カリエスの重要な原因菌のひとつと考えられている.本研究は, A. naeslundiiをう蝕誘発菌として使用し, 人工口腔装置内における3.8および38%フッ化ジアミン銀水溶液の象牙質う蝕抑制効果を比較検討することを目的とした.36個のウシ象牙質歯片を3.8%フッ化ジアミン銀水溶液3回塗布群および38%フッ化ジアミン銀水溶液1回塗布群とコントロール群の3つのグループに分け, 人工口腔装置中で60時間観察した.う蝕抑制効果の評価として, pH測定, 象牙質硬度測定, 人工バイオフィルム蓄積量の測定, 象牙質表面における残留銀量およびフッ素量の微小X線元素分析を経時的に行った.その結果, 3.8および38%フッ化ジアミン銀水溶液塗布群はコントロール群と比べ, 著しく人工バイオフィルムの蓄積と象牙質の硬度減少を抑制することがわかった.一方, 3.8と38%フッ化ジアミン銀水溶液塗布群間には統計学的な有意差はみられなかった.また, 残留銀およびフッ素の微小X線元素分析の結果により, 60時間経過後の銀とフッ素の残留量は, 3.8と38%のフッ化ジアミン銀水溶液塗布群間に有意差がないことが明らかとなった.以上のことから, 3.8%フッ化ジアミン銀水溶液に38%フッ化ジアミン銀水溶液と同等の象牙質う蝕抑制効果が期待されることが示唆された.

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© 2005 一般社団法人 口腔衛生学会
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