口腔衛生学会雑誌
Online ISSN : 2189-7379
Print ISSN : 0023-2831
ISSN-L : 0023-2831
55 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • Sisilia Fusi FIFITA, 久山 佳代, 松本 敬, Amanaki FAKAKOVIKAETAU, 山本 浩嗣
    2005 年 55 巻 3 号 p. 143-152
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はトンガ王国における口腔粘膜疾患を調査し, さらに"剥離細胞診"による調査方法の客観性を検討することである.過去にトンガ王国で口腔粘膜に対し, 微生物学的ないし細胞学的調査は行われていない.口腔剥離細胞は, 2001〜2003年の間に治療目的に来院した130人の病変がみられた口腔粘膜や歯周ポケットから採取し, Papanicolaou染色を施した.細胞は細菌, 食物残渣や扁平上皮細胞の所見について観察を加えた.対象者の大部分は疼痛や炎症所見を伴う歯周疾患(97.5%)を有し, 一方2.5%に角化異常である"白板症"がみられた.これら歯周疾患患者の60.8%に膿瘍形成がみられ, 29.2%の顔面に腫脹を伴っていた.歯周ポケットから採取した剥離細胞標本の45.4%に放線菌ないし歯肉アメーバを含む細菌集塊が観察され, すべて(100.0%)の扁平上皮細胞の核に軽度〜中等度の炎症性変化が認められた.細胞学的に多数の症例でこれら微生物と食物残渣の存在を確認した本結果は, 劣悪な口腔衛生環境を示唆し, それは子供たちにおいても同様であった.トンガ王国での本結果はさらなる口腔衛生活動の必要性を強調する.また, 口腔剥離細胞診は臨床現場で補助的な情報を提供し得る.
  • 森谷 俊樹, 高橋 雅洋, 佐藤 保, 米満 正美
    2005 年 55 巻 3 号 p. 153-158
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    岩手県盛岡保健所管内11市町村において, 2002年度に実施された85歳の口腔と全身の状態に関する調査結果より, 口腔内気体の揮発性硫黄化合物(VSC)濃度およびその関連口腔内診査所見〔舌苔の付着状態の視診(舌苔スコア), CPI重度歯数〕と日常生活動作能力(ADL)および生活の質(QOL)の測定指標との関連について検討した.参加者349名のうち168名を対象に舌苔スコアと口腔内気体のVSC濃度測定を行った.VSC濃度測定には口臭測定器OralChroma^<TM>を使用した.有歯顎者に対しては, 歯周組織の状態も診査した.ADLおよびQOLに関するアンケートは, 面接聞き取り調査法により行った.前者は「老研式活動能力指標」を, 後者は「地域高齢者のための簡便なQOL質問表」(以下, QOL質問表)を使用した.その結果, 「老研式活動能力指標」の下位尺度は, VSC濃度およびその関連口腔内診査所見と関連はみられなかった.「QOL質問表」の下位尺度では, 経済的ゆとり満足感と精神的活力がH_2S濃度の嗅覚閾値(26ppb)との間に, それぞれ有意なオッズ比0.30, 0.55を示し, これらのQOLが高いとH_2S濃度は嗅覚閾値未満になりやすいという関連が認められた.また, 精神的活力は舌苔スコアとの間に有意なオッズ比0.69を示し, このQOLが高いと舌苔スコアは0または1になりやすいという関連が認められた.これらのことから, H_2S濃度と「QOL質問表」の一部下位尺度では, H_2Sの原因の1つである舌苔を通して関連している可能性が示唆された.
  • 後藤田 宏也, 田口 千恵子, 内山 敏一, 有川 量崇, 山内 里央, 小林 清吾, 佐久間 汐子, 上江洲 香實
    2005 年 55 巻 3 号 p. 159-164
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    半導体レーザーを用いたう蝕診断器: DIAGNOdent^[○!R]は非破壊的に微細なう蝕病変を検出できるため, 初期う蝕または前臨床う蝕の診断に使用できることが期待される.臨床診断におけるDIAGNOdent^[○!R]の有用性はいくつか報告されているが, 小窩裂溝部におけるSticky感の有無との対応を検討したものはない.Sticky感の有無はシーラントなど積極的予防処置適応歯の条件として有用とされてきたが, この判定に歯科用探針を用いることに問題があった.そこで今回われわれは, Sticky感の有無とDIAGNOdent^[○!R]測定値の関係について, 臨床評価や使用基準を評価する目的で小学校児童を対象に臨床疫学的な検討を行った.その結果, DIAGNOdent^[○!R]値のCut-off pointを設定し, 敏感度と特異度を検討した結果, Cut-off pointを15, 20, 25, 30としたときのSticky(+), Sticky(-)のそれぞれの敏感度は0.89, 0.78, 0.63, 0.48, 特異度は0.61, 0.74, 0.80, 0.84となった.またDIAGNOdent^[○!R]値20でのCut-off pointにおけるkappa値は0.49と最大で, 陽性反応適中率は60%, 陰性反応適中率は87%となった.Sticky感のない健全歯の検出に比較的高い有効性が認められた.
  • 日高 三郎, 東納 恵子, 岡本 佳三
    2005 年 55 巻 3 号 p. 165-172
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    洗口剤の口腔内リン酸カルシウム沈殿物形成(歯石形成, エナメル質再石灰化)に与える影響の可能性を調べるため, 洗浄, 抗菌, 殺菌, 抗炎症, 抗口臭, 湿潤効果のいずれかを1〜3つもつ9種類の市販洗口剤のin vitroリン酸カルシウム沈殿物形成に対する抑制能をpH低落法を用いて測定した.その結果は, ハイザック^[○!R]>コンクールF^[○!R]&gtモンダミン^[○!R]>GUM^[○!R]>レノビーゴ^[○!R]>リステリン^[○!R]>1/15希釈イソジン^[○!R]>1/50希釈ネオステリングリーン^[○!R]>絹水^[○!R]の順であった.さらに, これらの抑制能は抗歯石剤エチドロン酸の濃度範囲10〜60μMで比較すると, より強いかほぼ同じ能力のものであった.ハイザックはその成分中に促進剤を含んでいながら, その効果からは最強の抑制剤であった.これらのことから市販の洗口剤が副作用として抗歯石・抗エナメル質再石灰化作用を有する可能性が強く示唆された.このため, 洗口剤の適用にあたっては抗石灰化効果を考慮に入れておく必要があると思われる.
  • 田村 道子
    2005 年 55 巻 3 号 p. 173-185
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    成人においてどのような歯科保健行動, 健康習慣が口腔の健康状態に影響しているのかを調査することを目的に, 新宿区歯周疾患検診を受診した40, 50, 60歳の2,343名を対象に, 成人の口腔健康習慣と口腔保健状況との関連について分析を行った.歯の健康に影響する保健行動(口腔健康習慣)として, 定期的な歯科健診, 歯石除去の受診, 補助的清掃用具の使用, 十分な時間をかけた歯磨き, フッ化物配合歯磨剤の使用, 非喫煙, 口腔内の自己観察, 喫煙の歯周疾患に及ぼす影響の認識, 現在歯数の認識の9項目を選び, これらの口腔健康習慣の実践項目数と口腔内状況との関連について検討を行った.その結果, 歯周疾患検診を受診した者においては, 口腔健康習慣を数多く実践している者ほど歯周組織が健康で, 未処置歯や喪失歯が少ないことが判明し, 生活習慣と歯の健康との関連が明らかになった.また, 口腔健康習慣を多く実践している者にかかりつけ歯科医を有する者が多いことがわかった.口腔健康習慣の各項目は, 容易に家庭で実践することが可能な保健行動・生活習慣であり, 患者が歯科医院を受診した機会を捉えて歯科保健指導を繰り返し行い, 口腔の健康への関心を高めて健康習慣を実践していくように働きかけを行うことが, かかりつけ歯科医の役割として大切であると考察された.
  • 薄井 由枝, 今井 奨, 斎藤 典子, 花田 信弘, 植松 宏
    2005 年 55 巻 3 号 p. 186-193
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    有歯顎高齢者が増加している今日にあって, 加齢や歯周病の進行などの原因により根面露出した歯は, 潜在的に根面カリエス罹患のリスクが高くなるといわれている.Actinomyces naeslundiiは, 根面カリエスの重要な原因菌のひとつと考えられている.本研究は, A. naeslundiiをう蝕誘発菌として使用し, 人工口腔装置内における3.8および38%フッ化ジアミン銀水溶液の象牙質う蝕抑制効果を比較検討することを目的とした.36個のウシ象牙質歯片を3.8%フッ化ジアミン銀水溶液3回塗布群および38%フッ化ジアミン銀水溶液1回塗布群とコントロール群の3つのグループに分け, 人工口腔装置中で60時間観察した.う蝕抑制効果の評価として, pH測定, 象牙質硬度測定, 人工バイオフィルム蓄積量の測定, 象牙質表面における残留銀量およびフッ素量の微小X線元素分析を経時的に行った.その結果, 3.8および38%フッ化ジアミン銀水溶液塗布群はコントロール群と比べ, 著しく人工バイオフィルムの蓄積と象牙質の硬度減少を抑制することがわかった.一方, 3.8と38%フッ化ジアミン銀水溶液塗布群間には統計学的な有意差はみられなかった.また, 残留銀およびフッ素の微小X線元素分析の結果により, 60時間経過後の銀とフッ素の残留量は, 3.8と38%のフッ化ジアミン銀水溶液塗布群間に有意差がないことが明らかとなった.以上のことから, 3.8%フッ化ジアミン銀水溶液に38%フッ化ジアミン銀水溶液と同等の象牙質う蝕抑制効果が期待されることが示唆された.
報告
  • 木本 一成, 晴佐久 悟, 田浦 勝彦, 志村 匡代, 藤野 悦男, 山本 武夫, 葭原 明弘, 磯崎 篤則, 荒川 浩久, 小林 清吾, ...
    2005 年 55 巻 3 号 p. 199-203
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    NPO法人日本むし歯予防フッ素推進会議では, 2004年3月末日現在の施設における集団応用でのフッ化物洗口実施状況を調査した.この調査は1983年からほぼ2年ごとに実施しており, これらの結果から2010年における実施状況を推定した.当会議会員ならびに当会議で把握している歯科医師, 行政, 学校などのフッ化物洗口実施関係者に施設別でのフッ化物洗口実態調査を依頼して集計した.その結果, 2004年3月末日現在では, 45道府県で3,923施設, 396,702人がフッ化物洗口を実施しており, その割合は全国の当該児童数のおおむね3.1%に相当した.また, 2010年におけるフッ化物洗口実施施設数と実施人数を1996年の値を基礎として推計したところ, 2010年ではフッ化物洗口実施施設数8,782施設, 実施人数896,916人に達することが見込まれた.「健康日本21の地方計画」にフッ化物応用を組み込まず, 具体的なフッ化物洗口に関する目標値を掲げていない都道府県行政が多く存在して地域格差がみられることから, 早急に「フッ化物洗口ガイドライン」の周知が徹底されるべきである.今回の調査結果がフッ化物洗口の数値目標を検討するための基礎データとして利用され, 2005年に行われる「健康日本21」の中間評価見直しの際にフッ化物洗口が目標として採用され, かつフッ化物洗口の数値目標が設定されるように提言する.
短報
feedback
Top