口腔衛生学会雑誌
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原著
耳下腺唾液による亜硝酸生成について : がんリスク低下をめざした基礎研究
新原 英嗣森川 倡子池田 和博八重垣 健
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2006 年 56 巻 2 号 p. 187-191

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抄録

唾液沈渣成分による亜硝酸イオン(NO_2^-)生成に必要な唾液成分の性状を明らかにするために本研究を行い,以下の結果を得た.1)NO_2^-生成に関与する唾液の因子(有効成分)は,分子量5,000以下であった.2)耳下腺唾液では分子量500以下の画分にNO_2^-生成に関与する唾液の有効成分が多く,分子量500〜1,000および3,500〜5,000にもわずかながら有効成分が認められた.3)イオン交換クロマトグラフイーと透析の結果から,耳下腺唾液の有効成分は等電点が中性付近の低分子物質と考えられた.4)チオシアン(SCN-),過酸化水素(H_2O_2)は,それぞれ単独ではNO_2^-生成促進効果を示さなかったが,SCN-とH_2O_2の混合液ではNO_2^-生成が認められた.5)グルコース,フルクトース,マルトース,スクロースの添加はそれぞれ単独でNO_2^-生成を示した.6)グルコースの存在下で乳酸を添加することでNO_2^-生成の増加が認められた.以上の結果から,グルコースなどの糖類やSCN-とH_2O_2混合物が唾液中のNO_2^-生成に必要な因子となる可能性が考えられた.したがって,口腔清掃などによる口腔衛生状況の改善は,消化器がんリスクの低下に有効であると考えられた.

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© 2006 一般社団法人 口腔衛生学会
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