2008 年 58 巻 5 号 p. 482-489
本研究の目的は,異なる局所的フッ化物応用に対する再石灰化のプロセスをin vitroにてQLF法により評価することである.80個のウシエナメル試料に鏡面研磨を行ってエナメル質試料を作製し,このエナメル質試料を脱灰溶液に48および96時間浸漬することによって初期う蝕試料を作製した.初期う蝕は,初期う蝕部のミネラル喪失量と相関する指標であるΔQ値(%・mm^2)により評価した.それぞれの初期う蝕試料は,4種類のフッ化物処置(対照群,フッ化物配合歯磨剤群,APFゲル群,フッ化物配合歯磨剤+APFゲル群)を行った.それぞれのフッ化物処理のための時間を除いて,すべての試料は28日間人工唾液に浸漬した.その結果,低脱灰群において9日目以降に,高脱灰群においては15日目以降にミネラルの回復は平衡に達した.対照群とフッ化物配合歯磨剤群において,両APFゲル処理群よりも高いミネラルの回復が低脱灰群および高脱灰群に観察され,両APF処理群に違いは観察されなかった.(p<0.05).すなわち,フッ化物配合歯磨剤の応用あるいは人工唾液のみの応用と比較して,APFゲルによる処置はミネラルの回復を妨げる可能性のあることが示唆された.