早食いを自覚する者に対して,早食い防止啓発パンフレットの配布,あるいはパンフレットの配布と食行動記録の指示を行い,それぞれの効果を比較検討することを目的とした.
岡山大学歯学部学生115人の中から,アンケート調査で早食いを自覚している者43名を選出し,早食い防止啓発パンフレットを配布した群(パンフレット群)とパンフレットを配布し,さらに食行動記録を指示した群(パンフレット+食行動記録群)にランダムに振り分けた.食行動については,アンケートによる主観的評価のほか,鮭おにぎりを完食するまでの総咀嚼時間,総咀嚼回数,口に運ぶ回数を客観的に測定し,一口あたりの量および咀嚼速度を算出した.なお,これらの評価は,ベースライン時とその2週間後に行った.
その結果,パンフレット+食行動記録群においては,ベースライン時と比較して2週間後では早食いと自覚する者が有意に減少していた.また,2週間後では,「お腹一杯になるまで食べますか」の項目において「いいえ」と答えた者が,パンフレット群よりもパンフレット+食行動記録群で有意に多かった.ベースライン時と2週間後の比較では,介入前のおにぎりの一口あたりの量を1.0とした場合,介入後のおにぎりの一口あたりの量は,パンフレット+食行動記録群,パンフレット群それぞれ0.82と1.00であり,パンフレット+食行動記録群のほうが有意に減少していた.
以上のことより,早食い防止啓発パンフレットの配布単独よりも,食行動記録をこれに加えるほうがより早食いの改善に有効かもしれない.