2016 年 66 巻 5 号 p. 465-474
健康寿命の延伸には生活習慣病の予防が必要である.口腔の健康状態の維持は生活習慣病の予防につながると考えられているが,その関係性の解明は十分とはいえない.そこで本研究では,口腔の健康状態と生活習慣病の関係を調べた.
平成19年度久山町住民健診で歯科健診を受診した40~79歳の2,523人を分析対象者とした.口腔の健康状態は,現在歯数,歯周ポケットの深さ,う蝕経験状態を評価した.生活習慣病については,糖尿病,高血圧,脂質異常症の有病状況を評価し,すべての疾患を有していない者を「生活習慣病がない者」とした.年齢を40~59歳と60~79歳に層別化し,目的変数に生活習慣病の有無,説明変数は口腔の健康状態を用いてロジスティック回帰分析を行った.
生活習慣病がない者は40~59歳で42.0%,60~79歳は17.9% であった.ロジスティック回帰分析で年齢,性別,body mass index,喫煙,飲酒,運動習慣,職業の影響を調整した結果,40~59歳では多数歯の保有,60~79歳では歯周ポケットが浅いことは生活習慣病がないことと関連していた.
本研究では,口腔の健康な者には生活習慣病のない者が多いことが示されたことから,口腔の健康状態を良好に保つことが生活習慣病の予防につながる可能性が示唆された.