本研究の目的は,成人に対して歯科予防処置を行う場合の必要歯科衛生士数(「必要DH数」)を推計し,就業歯科衛生士数(就業DH数)と比較してその充足状況を評価することである.そのために今回は,一つの地域の歯科医療機関を対象にした質問紙調査を行った.それによって得られた値を「必要DH数」を算定する推計式に当てはめた.
山梨県の歯科医療機関を対象に,歯科衛生士の雇用人数とその労働時間,一回の歯科予防処置時間(「最長」,「最短」,および「最頻」の時間),定期歯科健診の頻度,および診療時間について質問紙調査を行った.歯科衛生士の充足状況に関する評価には,「必要DH数」/就業DH数の比を用いた.山梨県において「必要DH数」は,一回の歯科予防処置の時間の平均が「最短」(9.4分),および「最頻」(18.1分)の場合には充足されているが,「最長」(32.0分)の場合には不足していると評価された.その平均「最長」時間を用いた場合の「必要DH数」/就業DH数の比は,山梨県では,1.61であった.