口腔衛生学会雑誌
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総説
口腔の健康状態および歯科保健サービスの受給状況と歯科医療費や医療費との関連
竹内 研時佐藤 遊洋須磨 紫乃古田 美智子岡部 優花田中 照彦小坂 健山下 喜久
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2017 年 67 巻 3 号 p. 160-171

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抄録

 近年,歯科疾患を予防・管理し口腔の健康状態を良好に保つことが歯科疾患による経済的負担を減らすだけでなく,生活習慣病重症化予防等につながることが報告されている.本研究は口腔の健康状況や歯科保健管理が歯科医療費および医療費にどのような影響を与え得るかについて,これまでの知見を総覧することを目的に,①口腔の健康状態と歯科医療費および医療費の関係の検討,および②歯科保健サービスの受給状況と歯科医療費および医療費の関係の検討,を行った.電子検索データベースとハンドサーチによる文献検索から32編が精読の対象となった.①に関しては,残存歯数が20歯以上の場合に歯科医療費は少なく,また残存歯数が多いほど医療費は少なくなる傾向を多くの文献が報告した.また,歯周病を中心とした歯科疾患の存在も歯科医療費および医療費の増加と関連するという報告が存在した.②に関しては,予防目的の歯科通院や歯科検診に代表される歯科保健活動への参加が歯科医療費および医療費の少なさと関連するという報告がみられた.本研究結果から,口腔の健康状態の中では特に残存歯数が,歯科保健サービスの中では特に予防目的の歯科医療機関の受診が,歯科医療費および医療費と関連することが示唆された.これより,歯の喪失の主たる要因となるう蝕や歯周病などの歯科疾患の予防を中心とした歯科医療機関への定期受診を若年期から継続させることは,歯科医療費だけでなく医療費全般を抑制できる可能性があると考えられる.

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© 2017 一般社団法人 口腔衛生学会
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