2019 年 69 巻 4 号 p. 198-203
2013年のWHO口腔診査法第5版からCommunity Periodontal Index(CPI)の方法が改訂された.改訂法では歯石の有無が評価から除外され,歯肉出血と歯周ポケットを別に記録するようになった.本研究ではCPIを用いた口腔保健調査において従来のCPI(従来法)による歯周組織の評価に加え,全被検分画の歯肉出血を記録することで改訂法による評価も行った.両者の結果を比較することで,評価方法の改訂により有所見者やスクリーニングに用いた場合の受診勧奨者の割合にどの程度影響するかを検討した.
調査対象は2016年度の歯科健康調査に参加した岩手県大槌町の成人住民1,159名で,そのうちCPIの代表10歯のいずれかを有する者882名(男性327名,女性555名,平均年齢64.2±12.9歳)の結果を分析した.改訂法での評価では所見ありとみなされる者は本集団の69.3% に該当し,従来法で評価した場合(84.2%)と比べて有意に低かった.これは従来法で個人コード2(歯石あり)と判定される者の半数近く(47.1%)が歯肉出血スコアが0であったためであった.また,歯石があっても出血の認められない部位では分画による違いは認められなかった.本研究の結果から従来法において歯石付着所見のみ認められる者には歯肉出血がみられない者が多く含まれており,改訂法では有所見者とみなされないことが示された.