口腔衛生学会雑誌
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原著
HbA1cと歯周ポケットの状態および喪失歯数の疫学的関係
渡辺 俊吾岩永 賢二郎百々 美奈石河 理紗飯嶋 若菜加藤 翼丹田 奈緒子相田 潤小関 健由
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2020 年 70 巻 3 号 p. 129-135

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抄録

 糖尿病は歯周疾患との間で双方向の関連性があることが古くから示唆されている.本研究では歯周炎の重症度を考慮した歯周疾患と糖尿病の関連性を調査することを目的とする.宮城県北部の農村地帯の住民健診における4年間の横断研究にて,糖尿病の指標であるHbA1cと歯周炎歯数および喪失歯数の間の関係を重回帰分析で解析した.分析で使用する項目は,従属変数であるHbA1cに対して,統制変数が年齢,性別,BMI,収縮期血圧,拡張期血圧,喫煙習慣,1年以内の定期歯科受診の有無,刺激唾液量の8項目,独立変数が歯石付着非歯周炎歯数,中等度歯周炎歯数(歯周ポケット深さ(PPD)4〜5 mm),重度歯周炎歯数(PPD 6 mm 以上),第三大臼歯を含む喪失歯数の4項目とした.対象となった302名の単変量解析の結果では,HbA1cに対して有意な関連性が認められたのは,歯石付着非歯周炎歯数,中等度歯周炎歯数,重度歯周炎歯数であり,いずれも正の関連性であった.多変量解析の結果では,HbA1cに対して,有意な正の関連性が認められたのは歯石付着非歯周炎歯数,重度歯周炎歯数であり,有意な負の関連性が認められたのは喪失歯数であった.本研究より,PPD 6 mm 以上の状態が糖尿病と関連性が強いことや,口腔内における糖尿病の増悪因子と寛解因子の両方が示唆された.今後は医科歯科連携をより強化し,歯科において歯石除去や重度歯周炎を有する歯への対応を見据えた歯周病治療を行うことが糖尿病治療において欠かせない視点となると考えられた.

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© 2020 一般社団法人 口腔衛生学会
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