歯の喪失と骨粗鬆症は,50歳以上に影響を与える大きな公衆衛生問題である.今回,北海道オホーツク地域で過去に実施したコホート調査を再分析して,高齢女性の歯の喪失のリスク要因について検討を行い,歯の部位別の喪失のリスク要因についても分析を行った.解析対象者は北海道オホーツク地域2町の60歳以上の居住者で,平成12年と平成17年の両方の調査に参加した女性70人である.この女性70 人は,インフォーム・ド・コンセントで,書面で同意が得られた者である.調査項目は,歯の状況,骨密度(踵骨超音波法で測定された踵骨Stiffness 値),年齢,食習慣,喫煙経験,飲酒習慣,慢性疾患,運動習慣,出産回数,かかりつけ歯科医,歯磨き習慣であった.分析は,5年間の歯の喪失の有無を目的変数として,ロジスティック回帰分析の単変量解析,Stepwise法を用いた多重ロジスティック回帰分析を行った.多変量解析の結果,全体の歯の喪失と関連のあった要因は,出産回数4回以上,色の濃い野菜の摂取習慣が週5日以下および歯磨き習慣が1日1回以下であった.本研究より,踵骨Stiffness値と歯の喪失との関連はみられなかった.より大規模な縦断研究が必要と考えられた.