口腔衛生学会雑誌
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原著
定期的歯科介入が行われている施設利用知的障害者の支援必要度と口腔保健支援状況との関連性
吉田 歩未中村 由紀大島 邦子中島 努笹川 祐輝濃野 要早﨑 治明
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2023 年 73 巻 4 号 p. 260-269

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抄録

 本研究は,知的障害者の障害支援区分をはじめとした支援の必要度と口腔内の状態および口腔ケアを受ける際の協力度(口腔ケア協力度)との関連性を明らかにすることを目的とした.調査対象は新潟県内の入所型の障害者支援施設の知的障害のある施設利用者101名とした.

 結果として,障害支援区分と歯の状態では現在歯数,健全歯数,処置歯数,未処置歯数,喪失歯数において有意差を認めなかった.一方,障害支援区分と口腔ケア協力度では有意差を認め,区分が高くなると口腔ケア協力度が有意に低下した.また,ADL評価でも障害支援区分と同様の結果を認めた.ADL自立度「要支援」において口腔ケア協力度は起き上がり,立ち上がり,衣服の着脱,危険の認識,入浴,食事の6項目が協力度「悪い」が有意に高く,ADL自立度「自立」において衣服の着脱,危険の認識,入浴,排尿,食事の5項目が協力度「良い」が有意に高かった.

 これらの結果から,定期的な歯科介入が実施されている施設の知的障害者の歯の状態は障害支援区分に関連しにくく,支援の必要度が高いほど口腔保健支援に対する協力が得づらいことが示唆された.またADL評価の結果より,支援全般における必要度から口腔ケア協力度を評価する際には,障害支援区分の認定調査項目「身の回りの世話や日常生活等に関連する項目」といった,知的能力を必要とする動作の自立度がスクリーニングに有効である可能性が示唆された.

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© 2023 一般社団法人 口腔衛生学会
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