口腔衛生学会雑誌
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原著
矯正歯科治療におけるセルフケアに対する自己効力感測定尺度の開発および信頼性・妥当性の検討
山地 加奈
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2024 年 74 巻 1 号 p. 29-39

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抄録

 本研究では,矯正歯科治療におけるセルフケアに対する課題固有的な自己効力感測定尺度(Self-efficacy scale for self-care;SESS)を開発し,その信頼性と妥当性を明らかにすることを目的とした.47項目からなる尺度原案を作成し,矯正歯科治療を受ける患者52名を対象に予備調査を実施した.項目分析により16項目からなるSESSを作成した.次に,信頼性と妥当性を検証するために,矯正歯科治療を受ける患者83名を対象に本調査を実施した.因子分析の結果,「ブラッシングに関する自己効力感」「習慣化に関する自己効力感」および「間食・受診に関する自己効力感」の三つの因子が抽出された.SESSの内的整合性ではCronbachのα係数が0.89であり,テスト─再テスト間に有意な相関(ρ=0.73,p<0.001)が認められ,高い信頼性が確認された.SESSは一般性セルフ・エフィカシー尺度と有意な相関が認められ(ρ=0.23,p=0.037),併存的妥当性が示された.矯正装置装着前後の歯垢付着を比較すると,SESSの高得点群と低得点群には有意な差がみられなかったことより,SESSの予測的妥当性は示されなかった.以上から,今回開発した矯正歯科治療におけるSESSには高い信頼性と併存的妥当性が認められた.本SESSを用いた今後の臨床研究への応用が期待される.

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© 2024 一般社団法人 口腔衛生学会
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