口腔衛生学会雑誌
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1歳6か月児歯科健康診査におけるう蝕罹患型O1型/O2型の判定基準とその見直しに関する全国調査
吉岡 昌美坂本 治美福井 誠日野出 大輔
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2025 年 75 巻 1 号 p. 22-30

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抄録

 1歳6か月児歯科健康診査では,う蝕なしの者をう蝕リスクの低いO1型とう蝕リスクの高いO2型に分類し,リスクに応じた保健指導を行うことが定められている.本研究では,全国87保健所設置市を対象とした質問紙調査を行うことにより,O1型/O2型の判定に用いるう蝕リスク指標および判定基準の現状と見直し状況,課題を見出すことを目的とした.回答の得られた63保健所の情報を集計した結果,「歯の汚れ」「おやつ(甘味飲料含む)」「哺乳」を危険因子としている保健所が全体の7割以上を占めた.「おやつ」や「哺乳」は頻度や時間帯,内容等の条件を細かく設定している保健所が多く,これまでに判定基準を見直している保健所も多かった.近年は保育時間が長くなり保育所でのおやつを含めた評価が難しい現状も窺えた.またフッ素ジェル等の利用が増えてきたこと,子ども用飲料の質や量の変化,子育ての考え方やアイテムなど時代の変化に対応する必要性を示唆するコメントがみられた.さらに保護者の意識や知識,健康行動などの格差に着目する必要性を示唆するコメントもあった.課題としては,「判定基準が統一されていないため自治体間での比較が難しい」という主旨の意見が最も多かった.これらのことから判定基準については,「地域性」「時代性」を考慮して見直すだけでなく,自治体間で比較できる「標準的指標」が求められているのではないかと考えた.

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