口腔衛生学会雑誌
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原著
都道府県別データを用いた咀嚼状態と平均寿命の地域相関研究
大森 智栄小島 美樹本多 さおり丸山 直美
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2025 年 75 巻 3 号 p. 132-140

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抄録

 都道府県別平均寿命に咀嚼状態が関連するかどうかを,生活習慣要因の関与に注目し,地域相関分析で明らかにすることを目的とした.

 第8回NDBオープンデータから,特定健診質問票および検査項目の都道府県別性年齢階級別分布を用いて,咀嚼困難,服薬,不良な生活習慣,肥満の該当者割合を算出し,直接法により年齢調整を行った.食事をかんで食べるときに「かみにくいことがある」あるいは「ほとんどかめない」と回答した者を咀嚼困難者とした.咀嚼困難者割合と平均寿命および各項目の該当者割合との関連性についてPearsonの相関係数 (r) を用いて分析後,平均寿命を目的変数,平均寿命と有意な相関があった項目を説明変数として重回帰分析を行い,標準化回帰係数 (β) を求めた.

 咀嚼困難者割合は,男女とも,平均寿命との間に有意な負の相関がみられ(男:r=-0.501,女:r=-0.442,いずれもp<0.01),降圧薬・血糖降下薬服用,喫煙習慣,肥満の該当者割合との間に有意な正の相関がみられた.平均寿命は,男性では咀嚼困難 (β=-0.241),降圧薬服用 (β=-0.348),飲酒量 (β=-0.429) と,女性では喫煙習慣 (β=-0.317),速食い(β=0.347),肥満 (β=-0.388)と関連していた.

 男女とも,咀嚼困難者割合が高い都道府県では平均寿命が低い傾向がみられた.咀嚼困難と平均寿命における生活習慣要因と独立した負の関連は,男性では認められたが,女性では認められなかった.

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