口腔衛生学会雑誌
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成人における手用歯ブラシによる歯垢清掃効果に及ぼす流水付加の影響について
上領 哲範
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1975 年 25 巻 4 号 p. 258-293

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抄録

手用歯ブラシによる歯垢清掃効果は各個人の歯みがき動作に認められる習慣性や癖 (習慣性や癖は歯みがき圧や歯みがき動作の回数で表現することができるが, 歯みがき圧は歯みがき時の歯ならびに手や腕の筋および関節などの生理的に変えにくい感覚のフィードバック機構によって決定される) に左右されることがわかっているので, 歯垢清掃効果 (歯垢清掃効果率は歯みがき圧と歯みがき動作の回数との積に比例する) の向上を求めるには, 手用歯ブラシによる刷掃だけでは限度があり, それにたとえば流水を付加するというような他の補助的手段を加える必要がある.
しかし, 流水を付加しても, 歯みがき動作そのものの習慣性や癖は改善されず, 歯みがき部位差による歯みがき動作の難易も影響を受けないし, また歯垢清掃効果率は歯みがき圧と歯みがき動作の回数に比例するという流水非付加時に認められる現象もなくならない。
ところが, 歯垢清掃効果率が100%の被検者では, 歯みがき圧と歯みがき動作の回数とは逆比例するという流水非付加時に認められた現象は, 流水付加時には認められなくなる。
流水を付加すると, 流水量が多いときには歯垢清掃効果は増大するので, 刷掃時の流水付加は手用歯ブラシによる刷掃の補助的手段としてはきわめて有効である。
だから, 流水という機械的な因子が加わることによつて手用歯みがきによる歯垢清掃効果の手動パターンがくずれ, 流水という機械力 (流水圧および流水量) そのものによって清掃効果がよくなるわけである。
しかし, 流水だけによる歯垢清掃においては, その効果は手用歯ブラシだけによる場合に比べるとかなり低い。また, 手用歯ブラシによる刷掃時に認められた歯みがき動作の難易に基因する歯垢清掃効果率の部位差は現われなくなることは, 人の感覚のフィードバック機構によらない機械力による歯垢清掃の特徴である。

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